デビュー19年を迎えた歌手の平原綾香さん。テレビやドラマ、ミュージカルなど活動の幅を広げていますが、現在、声優を担当している幼児向け音楽番組「おかあさんといっしょ」は去年亡くなった音楽家の父、平原まことさんの思い出が詰まった番組だそうです。お話を伺いました(全3回中の3回)。

父と思い出の番組「おかあさんといっしょ」

── 幼児向けの音楽番組、「おかあさんといっしょ」の人形劇「ファンターネ!」でミミコ姉さんの声を担当されています。

 

平原さん:
ミミコ姉さんはウミネコで、普段は旅に出ていてときどき帰ってくる役なのですが、知り合いにこのことを言うと「毎日子どもと番組を見ているけど、あーや(平原さん)だったの!?」と驚かれることもあっておもしろいです。

 

セリフだけではなく歌う場面もあるのですが、普段の声と違うので気づいていない方も多いみたいです。歌うと私だとわかるようですね。

 

2歳の頃の平原さんと音楽家の父・平原まことさんの愛情溢れる親子ショット

── 声優のお仕事はいかがですか。

 

平原さん:
収録は演劇のようにしているんです。歌のレコーディングは基本的にヘッドフォンをして行うのですが、歌以外のセリフのときは、ヘッドフォンを外して生声で収録しています。

 

声の収録が先で、その後、人形を動かしています。台本に「波の音が入る」とあれば、ちゃんと波の音の間をとってから次のセリフに入りますし、声優陣が全員集まって生声で演じているので、現場はまるでミュージカルのお稽古場のような感覚!とても楽しいです。

 

ミミコ姉さんはクールな役で、声も低めなのですが、実は最近のミミコ姉さんは最初の頃よりもほんのり声が柔らかくなっているんです。ファンターネ島の仲間たちと出会い、少しずつ心を開いているためです。

 

私は基本的にキャラクターの声はずっと変わっちゃいけないと思っていたんですが、キャラクターの心の描写を声にも反映させようというプロデューサーの方の提案に、心がおどりました。

 

── そうなんですね!じっくり聞かせていただきます。「おかあさんといっしょ」はお父様と思い出のある番組だと伺っています。

 

平原さん:
音楽家だった父はNHKの仕事も多く「あぐり」や「ちゅらさん」など朝ドラのほとんどの楽曲の演奏をしていましたし、「おかあさんといっしょ」の人形劇「にこにこぷん」の曲も吹いていました。

 

父が奏でるサックスやクラリネットなどは、音を聞けばすぐ平原まことの音だとわかるので、テレビを観ながら父の音を探すのが子どもの頃の楽しみでした。

 

「クインテット」のフラットさんのクラリネットの音も担当していたので、それもよく観ていました。レコーディングにはローディー(楽器の運搬やセッテイングなどのサポートをする人)として現場についていくこともよくありました。

 

幼少期に外で元気に遊ぶ平原さん。可愛らしい笑顔に現在の面影が残る

今もディレクターさんから「当時、お父さんとお仕事したのよ」と言っていただくこともあります。「おかあさんといっしょ」の人形劇「ファンターネ!」は父が亡くなったあとに始まったのですが、収録に行くと、なんとなく父と一緒にレコーディングしている感覚になります。

 

父との思い出がある番組に携われるというのはとても幸せで、嬉しいですね。