鹿児島も東京も私にとっては大事な居場所

── 結婚や出産を経て家族が増えるなかで、東京はどんな存在ですか？

 

はしのさん：昔は、東京＝仕事の場所という意識がありましたが、結婚して子どもができ、いまでは子育てをする場所にもなりました。

 

子どもが遊ぶ姿を見ていると、 “私にもこういうことがあったな、友だちと探検もしたっけ…”と、子どものころの思い出が蘇ります。

 

そんなときに私が思い出すのは鹿児島の風景だけれど、この子にとっては、東京のこの場所なんだな、と。子育てを通じて、私自身も東京の街にたくさん思い出ができました。

 

── はしのさんにとっては、故郷が2つある感じでしょうか。

 

はしのさん：そうですね。私にとっては、鹿児島と東京という2つの居場所があることで、自分のなかでちょうどいいバランスが保たれている気がします。

 

── 上京して32年。地元の風景もだいぶ変わってきたのでは？

 

はしのさん：懐かしい田舎の風景もずいぶん変わりましたね。昔、通学で使っていた西鹿児島駅（現在の鹿児島中央駅）は、可愛らしい木造のおうちのようなつくりでした。

 

当時は1時間に1～2本しかない汽車に乗って高校に通っていました。でも、いまでは大きな駅ビルも新幹線も通って、便利でよかったなと思う反面、少し寂しさも感じてしまいます。

 

ですが、変わらない光景もあります。子どものころ、海水浴場の帰りに郷土料理の「じゃんぼ餅」を食べるのがすごく楽しみでした。

 

みたらし団子のような甘辛いタレがたっぷりとかかった丸いお餅に串が2本刺さっていて、鹿児島県民にとってはお馴染みの味。子どものころに通っていた大好きなお店はまだ残っています。

 

いつか、故郷で子どもを海水浴場に連れていく機会があったら、「じゃんぼ餅」を食べながら私の昔話をしてあげたいですね。

 

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PROFILE　はしのえみさん

1973年、鹿児島市生まれ。萩本欽一主宰「欽ちゃん劇団」1期生として舞台に立つ。1996年から18年にわたり、TBS系の情報番組『王様のブランチ』に出演、姫様として人気を博す。2009年、俳優の綱島郷太郎さんと結婚、15年に長女おはなちゃんを出産。

取材・文／西尾英子　画像提供／佐藤企画