「出産後は親にもうまく甘えられず、トイレにこもって泣いていたこともありました」と話す、はしのえみさん。41歳で授かった子どもとの生活は未知の世界。わからないことだらけで気づいた育児中の心境の変化は、はしのさんだけではないはずです。
母乳が溜まりすぎて乳腺炎寸前に
── 41歳の時に長女のおはなちゃんを出産されました。結婚後は6年間、妊活されていたそうですね。
はしのさん:独身時代から生理不順で女性ホルモンの数値が低い時期があったので、婦人科に通って先生に相談していました。
ただ、積極的な不妊治療を受けていたわけではないんです。妊娠がわかったのは、“もし子どもを授からなくても、夫と犬と楽しく暮らしていく人生もありだな”と思い始めていた頃。
ちょうど18年間出演していた『王様のブランチ』を卒業した後でした。
── 産後はいかがでしたか?
はしのさん:出産したのは、42歳になる1週間前。41歳ともなると、人生たいていのことは経験済みなのに、出産と子育ては初経験で戸惑うことばかりでしたね。
自分の行動ひとつに子どもの命が関わっているプレッシャーで、気持ちがいっぱいいっぱい。
もともと人に頼ることが上手ではないので、産後、母親に手伝いに来てもらっていた時もうまく甘えられず、トイレにこもって泣いていたこともありました。
── 自分ですべてなんとかしようと思うと、追い詰められてしまいますよね。
はしのさん:いちばん大変だったのは、娘が生後2か月のころ。母乳が溜まりすぎて胸がガチガチに固まり、乳腺炎寸前になってしまったんです。
どうしたらいいのかわからず、連絡をとりあう鹿児島時代の同級生に慌てて電話をしたり、芸能界のママ友にアドバイスをもらいながら、なんとか乗りきりました。
「早く寝なさい!」とは言わず深呼吸
── 初めての子育ては、つい肩に力がはいりがちです。“子どものために”と、頑張りすぎるあまり、険しい顔になり、眉間にシワが寄ってしまうことも…。はしのさんも、そうした経験はありましたか?
はしのさん:もちろんありますよ。急いでいたり、焦っていると、つい眉間にシワが寄ってしまいますよね。
でも、そんな時には、娘がこちらに近寄ってきて、私の眉間のシワを優しくなでて伸ばそうとするんです(笑)。
── 想像するだけでほっこりする光景です(笑)。張り詰めた気持ちが一気にやわらぎそうですね。
はしのさん:そうなんです。「あ、ごめん、ごめん。今、ははここにシワが寄っていたよね」と(笑)。
私がいっぱいいっぱいになっている時も、「ちょっと休んだら?ひとりで全部やると疲れちゃうから、父にやってもらえばいいんだよ」と言ってくれるので(笑)、その言葉に便乗してちょっと休憩。
あまり自分を犠牲にしすぎると、子育てを楽しめなかったり、窮屈になったりするので、そこに「自分も楽しい」がプラスされるといいなと思って過ごしています。
── 例えば、どんな場面でしょう?
はしのさん:子どもが寝てくれないと、つい「早く寝なさい!」と強めの口調になってしまいますが、そんな時には深呼吸。
“子どもがそれを聞いて、悲しい気持ちで眠りにつくと嫌だな”と。子どもには、幸せな気持ちで眠って欲しいので、楽しくおしゃべりしながら寝てもらうように心がけています。
娘の幸せそうな寝顔を見ると、私も安心して眠りにつくことができるので、結局は、“自分のためにやっているんだな”と思えば、大変でも辛くはないし、楽しい気持ちで毎日を過ごせます。
娘中心の生活を楽しんだら「健康的」になれた
── 考え方ひとつで、毎日が変わりますね。現在、子育てと仕事のバランスはどんな感じなのですか?
はしのさん:子育てに重点を置いていますが、子どもも大きくなってきたので、夫の協力を得ながら、ロケなどのお仕事も再開しています。
夫は家事ができるタイプの人で、洗い物や掃除、洗濯もなんなくこなします。
出産と子育てを経験したことで、新たに気づいたことや子育てへの思いなど、母親としての感覚を生かした仕事をしてみたい気持ちが芽生えるようにもなりました。
よくEテレの番組を見るのですが、子どもも大人も一緒に楽しめる番組だなと感じています。私もそうした子ども番組でお仕事できたら嬉しいですね。
── 40代後半となると、体力の低下や女性ホルモンの関係で更年期の症状に悩まされがちな年代でもあります。体調のほうはいかがですか?
はしのさん:体の変化はひしひしと感じていますね。日によって浮き沈みがあり、上手にコントロールできない時もあります。
だから、疲れたなと感じたら少しゆっくりするなど、ムリをしないようにしています。
最近は週1回、ママ友がインストラクターをしているヨガ教室に通い始めました。生徒さんもみんな同じ学校や地元のお母さんたちですごくアットホームな雰囲気。
「イタタタ…」なんて言いながら(笑)、「お~、すごい。よくできるね!」とか「まだ筋肉痛が残っているんだよね~」と笑いながらやっています。
そうした時間や公園で子どもを遊ばせている間のちょっとしたおしゃべりがストレス解消になっています。
── 体と心の疲れをためないような暮らしを心がけていらっしゃるのですね。生活習慣でほかにも取り入れていることはありますか?
はしのさん:自分のためというより、子どもの体を考えて栄養バランスのいい食事づくりを心がけているのですが、結果的に、私自身も健康的な食生活になりました。
たっぷりの野菜を細かく切っておみそ汁に入れたり、朝、魚を食べたら夜は肉料理にしたり。
最近、夫がサーフィンを始めて、娘もボードで波に乗る練習をしているのですが、“娘がやるなら私もやってみようかな”と、新たにトライしました。
食事や運動、早寝早起きの生活も全部、娘に“便乗”させてもらってます(笑)。
自分のことは、どうしてもおろそかになりがちですが、家族に乗っかることで、新しい世界が広がったり、健康になったりと、いいことづくめです。
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PROFILE はしのえみさん
1973年、鹿児島市生まれ。萩本欽一主宰「欽ちゃん劇団」1期生として舞台に立つ。1996年から18年にわたり、TBS系の情報番組『王様のブランチ』に出演、姫様として人気を博す。2009年、俳優の綱島郷太郎さんと結婚、15年に長女おはなちゃんを出産。
取材・文/西尾英子 画像提供/佐藤企画