過去の体験で気づいた“一人ひとりに寄り添う”意味

佐藤校長が「誰ひとり取り残さない」をスローガンに掲げる根底には、以前、個別支援学級の担任をしていたときの経験がありました。

 

「個別支援学級の生徒は、 ひとりでは洋服のボタンが留められない、靴がはけないなど、抱えている課題がありました。

 

その解決方法は生徒によって異なり、どこに糸口があるかわかりません。

 

だから、教師も保護者も一緒に力を合わせ、小さなことでも情報共有して、その子に合う適切なアプローチ方法を探っていきました。試行錯誤した結果、子どもたちにはそれぞれのペースで、大きな成長が見られました。

 

その後、担当した一般学級では、ひとりの教師が30~40人の生徒を見ることに。すると、細かい部分に目が行き届かないまま、生徒たちの歩調をそろえさせなくてはなりません。

 

でも、本来であれば一般学級の生徒もそれぞれのペースを尊重するべきだと感じます。だから、私にとって“誰ひとり取り残さない”が大事な信念になりました」

 

撮影中、佐藤校長が歩くところに子どもがやってくる距離感は信頼関係があればこそ

個別支援学級での経験により、一人ひとりの生徒に寄り添い、その子どもに合った方法を模索することで、個性や魅力を伸ばしていけると実感した佐藤校長。

 

「誰ひとり取り残さない」を実践するため、同校では、教室に行けなくなった子どもたちの居場所となる校内フリースクール「あったかハートルーム」を設置されます。

 

「この部屋に来る子たちは、1日の予定(時間割)を自分で作ります。登校時間も自分で決め、自習するときもあれば、授業によってはリモートの利用や、教室で授業を受けることも好きに選べます。

 

学校に行けない子がいても、こういう教室があれば登校のハードルが低くなります。

 

また、自分で決めたことを達成することで自己肯定感にもつながることにもなり、自信をもって教室に戻ることができます」

 

こうした取り組みを保護者に理解してもらうためにも、佐藤校長は積極的に情報発信しているのです。