グチを言えたら部下との距離も縮まった

「そのころ娘が犬を飼いたがっていたので、『じゃあ、飼おうか』と。そうしたら息子が『保護犬がいい』と言いだし、家族で地域の譲渡会へ行ったんです」

 

譲り受けた犬の散歩がてら、娘や息子とも今まで話せなかったことも話すようになりました。

 

“お父さんを見ていたら、大学を出て就職することに意味があるのかな”と考えた、と息子に言われ、ハッとしたとも言います。

 

「息子は結局、専門学校に入りました。生き生きしている姿を見ていると、やりたいことがあるっていいなと思いますね」

 

すっかり精神的な安定を取り戻したケイスケさんですが、仕事も通常通りに復活した今、変わらずバリバリ働いています。

 

以前と違うのは、たまには愚痴を吐くようになったこと。それによって部下たちともかえって親密になれたそうです。

 

「更年期になって、『かえって明るくなったみたい』と、妻にも言われました」

 

照れたように話すケイスケさん。弱い自分を受け入れ、そんな自分をさらけ出せるようになったことで、本人も周りも楽になったのかもしれません。

文/亀山早苗 イラスト/前山三都里

※この連載はライターの亀山早苗さんがこれまで4000件に及ぶ取材を通じて知った、夫婦や家族などの事情やエピソードを元に執筆しています。