テレビ出演をきっかけに活躍の場が広がった

── テレビ番組の企画でタレントの浅田舞さんと踊る姿が印象的でした。

 

藤井さん:最近はありがたいことに、単なるダンサーではなく、タレント枠でテレビに出る機会が増えました。社交ダンスを知らない人と踊るのは、社交ダンスを幅広く知ってもらうことにつながるので、素直に嬉しいです。

 

── 反響も大きかったのでは?

 

藤井さん:社交ダンスがこんなに激しい競技と知らない方が多かったようですね。いまだに社交ダンスは年配の方だけのもの、と捉えられがちだから、僕がテレビに出てラテンダンスを踊ることで、若者の生き生きしたダンスがあることを知ってもらえたのはよかったです。

藤井創太さん
競技用のシューズはヒールが高いが「女性ダンサーはもっと大変です」

── しなやかな体の動きに見惚れてしまいました。普段はどんなトレーニングを?筋トレはするのですか?


藤井さん:じつは筋トレはあまりしないんです。胸が開く衣装を着るから、週に2回くらい腕立て伏せをするくらい。筋肉って鍛えれば鍛えるほど、硬くなる。僕はナチュラルな踊りをしたいので、外からは鍛えようとはあまり思わないですね。でもストレッチは欠かさない。踊る前は必ずストレッチをしています。そうしないとケガしちゃうので。

 

── 「藤井さんのダンスはセクシー」という感想も多いようですが、意識していますか?

 

藤井さん:していないです(笑)。「つくり込むセクシーさ」ってセクシーではないと思うんです。とはいえ、ラテンダンスの表現において男女の駆け引き的な要素って必要なんですよ。色気というか。自然と「素の自分」が出る部分なのかもしれません。

 

── 男女の駆け引きが感じられるような情熱的な踊りを、臆することなく披露できるのも才能ですよね。

 

藤井さん:恥ずかしいって思っているとそれが出てしまうので。でもさじ加減が難しいですね。羞恥心なくガツガツやっちゃうと、色気が消えてむしろいやらしくなる。だから、踊っているときは客観的な視点で自分を見るようにしています。基本的に自分が大好きなんで(笑)、踊っている自分がカッコいいなって思えるような演技を心がけています。

 

── 現在の社交ダンス界について、どう感じていますか?

 

藤井さん:最近テレビで取り上げられて、小さい子にも興味を持ってもらえるようになってきたけれど、日本ではまだまだ競技人口が少ないと思います。いっぽうで、僕と同年代の選手はすごく層が厚い。僕が感じているのは「僕の世代で盛り上げないと社交ダンスが死んじゃう」という危機感です。

 

── 確かに、藤井さんはいまの社交ダンス界を背負っている印象です。「100年に1人の逸材」と言われることについてはどう思いますか?

 

藤井さん:僕は自分が100年に1人の逸材だと思ったことはないです。でも、僕らの世代は「100年に一度の世代」なんじゃないかなって。

 

一緒に社交ダンスを習っていた幼なじみは、むしろ僕より天才。僕はステップができるまでに時間がかかる不器用なタイプですが、彼は簡単にできちゃう子でした。

 

彼は現実的なタイプだったので、ダンスでは生きていけないと思ったのかもしれません。でも、そういう才能ある人が努力して続けていれば、もっとすごいところに行けたのに…と思う。僕はその友達が隣にいたから、ただ負けたくないという気持ちで頑張っただけなんです。

 

自分が天才だと言うつもりはないけれど、努力しない人間は天才になれないとは思う。『THE DANCE DAY』で審査員を務めていた他ジャンルのトップの人たちも、みんな努力家。そして、心の底からダンスが好きな人。ダンスの世界にはそういう人しか残っていないんです。

 

── ほかのダンスをやってみたいと思いますか?

 

藤井さん:『THE DANCE DAY』に出演して、他ジャンルのダンサーと交流があったんです。現在のトップの技術を参考にしたいという意味でも、多ジャンルのダンスにも挑戦してみたい気持ちはあります。でもベースはやっぱり社交ダンスです。

 

── 最後に、今後の目標を教えてください。

 

藤井さん:最終的な目標は、やっぱり世界一。小5で世界一になったけれど、大人の競技大会はレベルが違う。現実的に考えて、相当頑張らないと世界一は難しいと思うけれど、やっぱり目指し続けたいですね。

 

<前編>「6歳で社交ダンスにハマった」藤井創太が「若干11歳で世界一になった軌跡」

 

取材・文/池守りぜね 撮影/二瓶 彩