パートナーがいない苦悩…ダンスができない日々

── 6歳から始めて、15年以上続けられているわけですが、社交ダンスを辞めようと思ったことは?

 

藤井さん:じつは大学を辞めて海外に行く決断をした時期に、そう思ったことがありました。当時、長く組んでいた子とパートナーを解消することになったんです。

 

パートナーがいないというのはつまり、社交ダンスができないということ。いままで何度かそういう時期を経験しているのですが、本当にもどかしく辛い期間です。

藤井創太さん

── 結局、留学中にパートナーは見つかったのですか?

 

藤井さん:はい。でも、パートナーが見つかって、これから世界に挑戦しようというときに、コロナの感染拡大が起きてしまった。海外に行けなくなり、パートナーとも意見の違いでペアを解消することになって。2年くらい試合に出られなかった時期がありました。そこが精神的にいちばんきつかったです。

 

── 空白の期間は、どのように過ごしたのですか?

 

藤井さん:もろに感情が表れるので、社交ダンスにおいてメンタルはいちばん重要です。だから、辛い期間は意識的に社交ダンスから距離をおきました。

 

でも、これまでダンスしかやってこなかったので、社交ダンス以外のことに触れるのは新鮮でした。「もしかしたら、ダンス以外の道もあるのかも」って思ったり。

 

でも、何か新しい経験をすると、今までやってきたことに対する向き合い方も変わるじゃないですか。そういう意味では、前とは違った踊りができるようになったと思います。ずっとひとつのことに打ち込むのもいいけど、それ以外を知らなさすぎるのも怖いと気づきました。

 

その経験を経て、周囲の人に「大人になったね」とか「余裕が出てきたね」と言われるようになりました。子どもっぽい面を減らすという意味では必要な期間だったと思います。