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「嫌いな作業はしてはいけない」エビ工場の鉄のルールが生まれた背景

仕事

2022.02.06

天然エビの加工を行う「パプアニューギニア海産」では、連絡なしに休み、好きな日に好きな時間だけ働く「フリースケジュール制」を取り入れて従業員の働きやすい職場環境を整えてきました。

 

他にも「嫌いな作業はしてはいけない」という同社のルールが注目を集めています。従業員の働きやすさを追求し、パート従業員との会話から生まれた鉄のルールの内容とは。代表取締役であり工場長の武藤北斗さんにお話をうかがいます。

海老を持つ武藤さん

嫌いな作業は「やらなくてもいい」ではなく「やってはいけない」

── 御社には「嫌いな作業をやってはいけない」というルールがあるそうですが、具体的にはどういうことでしょうか?

 

武藤さん:
はい。エビ工場では、毎月パート従業員にアンケートをとって自分の嫌いな作業に×をつけてもらっています。×をつけた作業については、その月は「やってはいけない=禁止」というルールになっているんです。

 

── 嫌いな作業は「やらなくてもいい」ではなく、「やってはいけない」なんですね。

 

武藤さん:
そうですね。このふたつは似ているようでまったく違います。実は、最初は「やらなくてもいい」だったんです。でも、それだと嫌いなことをどうしてもやってしまう人が出てきました。

 

「辛いけれど、嫌いだからやらないなんてわがままだ」「みんなのために頑張らなくてはいけない」

 

そんな感覚があったんだと思います。

 

なので、嫌いなことは「やらなくてもいい」ではなく「やってはいけない」と禁止事項にしてスッキリさせました。

誰かの「嫌い」は、誰かの「好き」だった

── このルールを導入した背景を教えてください。

 

武藤さん:
きっかけは、掃除です。僕は掃除が大嫌いなんですが、僕がこんなに嫌いなんだからきっとみんなも嫌いだろうと思っていたんです。なので、工場の掃除作業はパート従業員全員に平等に割り振っていました。

 

でもある日、パート従業員と面談をしているときに「私は掃除嫌いじゃないです。むしろ、結構好きなんです」と言う人がいたんです。理由は他の作業を続けているなかで気分転換になるからとのことでした。他の人にも聞いてみたら、やはり好きだと言う人もいれば、嫌いだと言う人もいる。

 

そこで、他の作業はどうなんだろうと思い、主要な工場作業の好き嫌いのアンケートをとってみることにしたんです。嫌いなら×、好きなら〇、どちらでもいいなら無印。見事にバラバラでした。全員×な作業もなければ、半分以上の人が×をしている作業もない。

 

1つの作業を見てみても、やりたくないと思っている人がいる一方でやりたいと思っている人がいる。そうなると、×を付けている人がその作業をする意味って何だろうと思いはじめて。じゃあ、禁止にしようとなったんです。

働きやすさを求めて進化し続けるルール

── このルールを導入したことでどのような変化がありましたか?

 

武藤さん:
パートさんたちが気持ちよく仕事をできるようになったせいか、作業効率が上がりました。また、作業が今まで以上に丁寧になり商品の品質も上がりました。

 

しかし一方で、気になる現象が起きました。

 

最初は「あなたの嫌いはあの人の好き」と分かりやすくするために、〇×アンケートの結果を従業員みんなが見える場所に貼りだしていたんです。

 

すると、誰かに対して「〇を付けているんだし、好きならやりなよ」と感じる人が出てきました。これによってみんながストレスを感じ始めてしまった。なので、2年程前から○はやめることにしたんです。

 

── ルールは常に変化し続けているんですね。

 

武藤さん:
はい、昨年の末からは表を貼りだすこともやめたんです。というのも、〇をやめたら今度は「×じゃないならやりなよ」みたいな雰囲気が出てきて、どうしようかなと(笑)。

 

そこで、表があることにより人のことを気にしてしまうという状況がつくられているならば、表を見えなくしようとなりました。結果、みんな自分の作業に集中できています。

 

やりたくない作業に×をつける表

ちなみに今は、社員に指示されたときにのみ、その作業をする△ができました。△は指示されなければ×と一緒です。

 

また、アンケートも毎月とることにしました。そうすることで今月は誰がどの作業に×をしているかが分からなくなるので、以前まで公表されていたアンケート結果から誰かの×を想像したり判断したりすることができなくなりました。

 

でもきっとまた変わっていくんでしょうね(笑)。

選択の自由を増やすことで、本当の意味で働きやすい職場になっていく

── 「嫌なことや苦手なことを乗り越えることで成長できる」という方もいますよね。

 

武藤さん:
その考え方もそれはそれでいいと思っています。僕自身は苦しいことを頑張って乗り越えるタイプです。ボクシングをやっていたので、自分を追い込んで3分間連打した時なんて「よし!やったぜ!」となります(笑)。

 

大事なのは、誰かにやらされているんじゃなくて、自分で「乗り越えるぞ」と選択していること。自分で乗り越えようと思ってやっていることはその人のためになると思います。でも、それを誰かに「頑張りなさい」「やりなさい」と言われたら嫌ですよね。人に言われて乗り越えるんじゃなくて、乗り越えることも自分で選ぶ。

 

そう考えると、この表は毎月自分で決められるので「今月はこれに挑戦してみよう」と思ったならば×にしなければいいだけなんです。

 

── すべてのことに対して「自分で選ぶ」ということを重視していらっしゃるんですね

 

武藤さん:
はい。僕たちの会社には色んなルールがあるけれど、基本的には僕は選択の自由をとても大切に考えています。もちろん僕の価値観はあるんだけれど、それを押し付けるんじゃなくて、あなたの価値観と僕の価値観を選べるようにする。

 

選択の自由を増やしていくことで、本当の意味での働きやすい職場になっていくと考えています。

 


パート従業員との対話の中から生まれた「嫌いな作業はしてはいけない」というルール。「完璧じゃない多少デコボコしたルールでも、みんなが納得できるルールをつくり、それを丁寧に重ねていきたい」という武藤さんの言葉が印象的でした。

取材・文/渡部直子 写真提供/武藤さん

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