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男性の育休利用率100%で「男女問わず育児を語れる」企業へ―ピジョン株式会社の取り組み

仕事

2020.02.16

2020.06.12

共働き時代に見合った自分らしい生き方・働き方を模索するCHANTO総研。今回は男性の育児参加に重点を置き「一カ月の育休制度」を導入しているピジョン株式会社を取材しました。これまで二度の育休を取得した人事部の若山直樹さんにお話を伺い、育休を取って気づいたことや気持ちの変化、また育児休業取得率100%に至るまでの経緯を教えてもらいました。

 

「ひとつきいっしょ」で“昔ながらの日本企業”から脱却


――2006年に導入された新しい育児休業制度「ひとつきいっしょ」は、既存の育児休業制度とどのような違いがあるのでしょうか?

 

若山さん(ピジョン):

「ひとつきいっしょ」の期間は1カ月。取得中は有給扱いになり、社会保険料も免除されます。また、お子さんが生まれた社員は「男女問わず」「お子さんが満16カ月になるまでの期間」で取得可能です。

 

導入当時は、「男性の育児参加」や「イクメン」という言葉もまだ一般的になっていない時代だったので、メディアからの取材も多く、周囲の関心の高さも知ることができました。

 

――それまでの男性社員の育児参加についての印象はいかがでしたか?

 

若山さん(ピジョン):

当時はよくも悪くも昔ながらの日本企業という感じでした。子どもが生まれても育児休業制度を利用する男性社員は0%。男性は一家の大黒柱として稼ぐ存在という意識が強く、積極的に育児参加しているとは言えない状況だったと思います。

 

事業として育児用品の製造・販売を手掛けているにも関わらず、育休を取って育児に参加している男性社員が少ないということには課題認識がずっとあって。それで2005年に「育児を語れる社員育成」をテーマに、改めて考えようということになったんです。

 

当時の育児制度担当者が「男性社員も中長期的に休みを取れる環境や風土を取り入れたい」と提案し、「ひとつきいっしょ」が導入されることになったんです。

 

――1カ月」という期間については?

 

若山さん(ピジョン):

期間についてはさまざまな意見がありました。1週間にするか、それとも2カ月にするか。新制度導入の目的の1つは「男性の育児参加」と「男性も育児を知る」ことにあったので、1週間では短いかといって2カ月現場から離れることに不安感を覚える社員もいるのではと考え、「1カ月」という期間に決定しました。

 

制度内容が具体的に決まってから、より社員に親しみのある制度にしようという想いから、そのネーミングを社内公募して決定しました。「ひとつきいっしょ」を社内にリリースしたときは、思ったより抵抗感もなく馴染んでいった印象でした。

ストローの使い方を身振り手振りで我が子に伝えた1か月

――若山さんは長男と次男が一歳になるタイミングで、それぞれ育休制度を利用していますね。実際に育休を取得してみていかがでしたか?

 

若山さん(ピジョン):

1カ月間、育児に時間をかけないとわからないことが確実にある」ということを実感しました。

 

「育児は大変」ということは頭ではわかっているつもりでいましたが、実際にやってみると、その大変さの「具体性」を知ることになるし、大変だからこそ感じる喜びもありました。

 

例えば、子どもがストローで飲み物を飲む練習を始めた時。息子はどうやってストローを使えばいいのか分からず、噛むことしかできなかったんです。普段大人が当たり前にやっていることを教えるってすごく難しいんですよね。私も悩みながら息子の目の前で「こうやって吸うんだよ」と、身振り手振りで何度もやってみせました。なんとかストローで飲み物を吸えるようになった時は本当に嬉しかったですね。

 

1カ月間、子どものそばにいるとうんちをする前の表情の微妙な変化とか、なんとなく感じ取れるようになってくるんですよ。子どもの成長や変化だけでなく、わずかですが「親としての成長」も得ることのできたこの期間。育休最後の数日間で感じた子どもの私への眼差しが何か変わったような気がしたこと、一生忘れることのできない意味のあるものでした。

 

それと同時に妻の「母親としてのすごさ」を目の当たりにすることも。育児は喜びや楽しさだけでなく、面倒なことやイライラすることだってたくさんあるんです。でも妻はそういう「面倒くささ」にも笑顔で対応できる強さと深い愛情があって。そういう場面を間近で見るたびに「すごいな、母親にはかなわないな」と感じました。

男性社員の「育休取得率100%」に繋げた会長からの一言


育休取得100%の子育てしやすい企業としてさまざまな表彰を受ける

 

――現在では男性社員の育児休業取得率が100%になったそうですね。

 

若山さん(ピジョン):

新制度がスタートして今年で14年目。「ひとつきいっしょ」導入後、数年で取得率40%くらいまで上がったのですが、その後、仕事の兼ね合いなどで休みを取る人の割合が20%代まで減ってしまったんです。その取得率の低下を知った当時社長(現:代表取締役会長)の山下が「なぜこんなに取得率が低いの?」と疑問視し、「子どもが生まれた社員が休みを取れなかった場合、その理由を上司が私に報告しにきて」ということに。それが『鶴の一声』となりました。各部署長は子どもが生まれた社員に対して育休取得を確認するようになったんです。「いつか取ろう」と思っていた社員も、上司から「いつ取るの?」と声がかかると具体的に考えやすい。

 

そんな経緯もあり、現在「ひとつきいっしょ」の取得率は100%。男性社員も「子供が生まれた」と聞くと周りの社員も「いつとるのかな?」と心構えが自然とできるように。仕事を引き継いだ相手も「自分の時もよろしくね」という空気に自然となっています。今となっては、休みの取りやすい風土と、「お互い様」という認識が出来上がっていると思います。

  

――ピジョン株式会社の「ひとつきいっしょ」の育休制度は、育児の大変さと現実を体感するという点で大きな意味があることがわかりました。男性の中長期的な育児休業は、本当の意味で「夫婦一緒に育児をする」という姿勢の芽生えにつながるのではないでしょうか。

 

取材・文/佐藤有香 撮影/緒方佳子

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