新元号「令和」が発表され、いよいよ「平成」が終わりを迎えようとしています。鉄道の世界では、平成初期に登場した車両が廃車になっているケースが見られます。一方、登場から何十年も経過した現在でも、バリバリ働いている車両も。一体、鉄道車両の寿命はどれくらいなのでしょうか。時代の節目に、調査してみました。

 

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鉄道車両の平均寿命は平均何年?

 

それでは鉄道車両の平均寿命は何年でしょうか?ひとつの考え方として税務署の減価償却期間が挙げられます。減価償却とは高価な機械設備を導入した際、購入代金を複数年で分割し、経費として計上することを指します。分割の年数は未来永劫続くものではなく、機械ごとに法定耐用年数が決められています。鉄道車両の耐用年数は以下のとおりです。

 

内燃動車(制御車及び附随車を含む):11年 電車:13年 電気・蒸気機関車:18年

 

単純に書くならば、税金面だけ考えると電車の場合、13年以上使わないと損ということになります。それでは電車を所有する鉄道会社は13年ごとに車両を取り替えるか、というとそうではありません!多くは製造から13年を過ぎても活躍していますし、ケースによっては40年以上働いている車両もあります。一般的に、在来線車両の平均寿命は30年~40年と言われています。一方、高速で走る新幹線は在来線よりも平均寿命は短いです。

交換サイクルが早い新幹線

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先ほども書いたとおり、平均寿命が短いのが新幹線車両です。2020年、JR東海では「カモノハシ」で知られている700系新幹線の置き換えが完了します。700系新幹線の廃車がスタートしたのは2011年(平成23年)のこと。最初に廃車になった700系新幹線C4編成の製造年は1999年(平成11年)なので、製造からわずか12年の命でした。

 

新幹線車両は在来線車両と比べると長距離を高速運転するため、車両のいたみが早く、寿命が短くなります。昭和生まれの方なら団子鼻の0系新幹線を思い浮かべると思いますが、0系は20年以上にわたって製造され、後発に製造された車両は東海道新幹線開業時の車両に置き換わっています。

大手私鉄の中では大切に長く使う阪急電鉄

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関東と関西を比べると、関西のほうが車両の寿命が長いように感じます。とりわけ、車両を大切に長く使う鉄道会社として大阪梅田と京都、宝塚、神戸を結ぶ阪急電鉄が挙げられます。阪急電鉄において最古参の車両が伊丹線(塚口駅~伊丹駅)を走る3000系です。

 

現在残っている3000系は1965年(昭和40年)の製造なので、50年以上にわたって活躍。しかも、製造から大きなリニューアルもされず、美しい状態を保っています。阪急電鉄は昔から丁寧な車両整備で有名な鉄道会社。そのため、どれだけ古い車両であっても、車体はピカピカです。3000系の次に古い車両は高度経済成長期にデビューした3300系ですが、リニューアル工事をしたおかげで、しばらくは活躍を続けることでしょう。

首都圏を走ったリサイクル車両

一方、製造当初から短期間の使用、その後のリサイクルを念頭に置いた車両もあります。それが、1993年(平成5年)にデビューしたJR東日本の209系です。209系は製造当初から「重量半分・価格半分・寿命半分」を掲げ、廃車後のリサイクルを考えた画期的な車両です。京浜東北線から首都圏のさまざまな路線で活躍。旧国鉄時代に製造された103系を置き換えていきました。

 

しかし、2010年(平成22年)に京浜東北線から撤退し、次々と廃車に。一般車両では機械類や部品も廃棄されるわけですが、209系の場合はその多くが後継車両に使われました。なお、一部の209系は再改造され、首都圏近郊のローカル線で活躍を続けています。

長生きの秘訣はリニューアル?

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人間ですと、よほどのことがない限り若返りは厳しいと思います。一方、鉄道車両の場合はリニューアルを通じて若返ることができます。リニューアルは会社とケースによってさまざま。まったくの新車に見えるときもあれば、なかなか気づきにくいときもあります。

 

リニューアルで長生きした車両としてJR西日本の大阪環状線・ゆめ咲線(桜島線)を走った103系が挙げられます。103系は高度経済成長期にデビューし、日本各地で活躍しました。首都圏では1990年代に引退が相次ぎましたが、JR西日本管区では車歴40年前後働いていました。その後、車歴40年前後の使用を見越して「体質改善40N工事」と称されるリニューアル工事を実施し、中には新車と見間違えるほどに変身した車両も。さすがに、リニューアルされた103系も2017年(平成29年)に大阪環状線・ゆめ咲線から引退しました。

 

それでも、大阪の大動脈である大阪環状線を40年以上にわたって走り続けたのは立派の一言。丁寧に整備され、リニューアルをすると鉄道車両は長期間にわたって活躍できます。

 

文・撮影/新田浩之