—— ハイスペック男子・深月がフラれてしまうなんて、実際には考えられないですが、そういうところもこの作品の見どころだと思います。
大谷監督
原作をコミックで手にしたとき、1巻は深月が表紙でした。しかし彼は星の恋心を受け入れず「僕はそういうのダメだから…」って言ってしまう。そこから物語が展開していき、すべてがはじまります。杉山先生の作品の何がすごいって、起承転結の「転」からはじまるというところなんです。「すごいですね」と感想を伝えたら「それをわかってくれたのはすごくうれしいです!」とおしゃってました。
—— 杉山先生の作品以外にも、『NANA』や『黒執事』と原作に熱烈なファンがいる作品の映像化を手がけてきていますが、普段から漫画をチェックしたりしますか?
大谷監督
支持されている作品にある魅力や良さの理由を知りたいので、おもしろそうなものはないかなとチェックすることはあります。
—— 漫画をチェックしていて「キュン」とすることはあるのでしょうか?
大谷監督
「キュン」というのはさすがに難しいけれど、例えば『NANA』を読んだときには「20歳の女の子にも人生があるんだ」と思いました。『4月の君、スピカ。』なら、高校生なりの人生、リアリティがあるわけです。自分の高校時代は、はるか昔なので思い出せないけれど(笑)。その目線に立つように心がけています。大人になったら当たり前のことが、高校生のときは当たり前ではない。そういうところを杉山先生はきちんと描いています。
今なら「寿司か焼肉」って訊かれたら、「寿司!」「焼肉!」と即答できるけど、高校生って「寿司かな〜、焼肉かな〜」って延々と考える。経験のなさからくる、迷いの多さはこの時期特有のものですからね。そういう部分を丁寧に表現したいと思っています。