犬・馬・イルカなど感情が豊かな生き物と接することで、心身の不調が楽になる「アニマル(動物)セラピー」という言葉を聞いたことがある人は多いと思います。 認知症のお年寄りや抗うつ状態にある患者さん、がんの終末医療中施設などに専門の訓練を受けた動物が訪れ、一緒に過ごすことで症状が改善したりつらさが和らいだりするのが「アニマルセラピー」です。 海外では、大人だけでなく子どもの治療にも積極的に取り入れられているそう。 今回は、犬をはじめとした動物の持つ不思議な力と、日本での「アニマルセラピー」の広がりなどを解説します。
「アニマルセラピー」は海外では広く普及している
実は、「アニマルセラピー」という言葉は日本でできた造語です。 欧米を中心とした海外では、「AAT(アニマル・アシステッド・セラピー)=動物介在療法」「AAA(=アニマルアシステッド・アクティビティー)=動物介在活動」と呼ばれています。犬に限定して「ドッグ・セラピー」と言うこともあります。
アメリカはもっともアニマルセラピーが盛ん
アメリカでは上記のような動物によるセラピーを積極的に取り入れる医療現場が増え続けています。 ポートランド・フロリダ・ボストンなど、アメリカの5つの小児科センターで白血病をはじめとする「がん」と診断された106名の子どもたちと26匹のセラピー犬の治療効果を記録したデータがありますが、毎週15分間セラピードッグと触れ合った子どもたちは、ドッグセラピーなしの子どもたちと比較して、血圧や心拍数データが良好だったという報告があります。
さらに、子どもたちだけではなく、両親や家族のストレス度が改善したことも報告されています。病気そのものに対する不安などは変わらないものの、動物たちと接することで、一時的にでも子どもがリラックスしたり、笑顔が見られたりするため、周りの大人もホッとする時間となるのでしょう。
また、アメリカの場合、メンタルヘルス治療にセラピードッグが必要と専門医に認められれば、盲導犬や介助犬と同様に、レストランや交通機関にも一緒に連れて行ける制度あるそうです。
日本ではまだ普及していないものの、少しずつ増加
一方日本では、「動物介在療法」などを積極的に取り入れている医療機関はまだまだ少ないですが、実施している医院では、専門の機関に登録された動物たちがボランティアとして派遣されており、獣医師の管理のもと、健康・しつけ・衛生面で「参加動物適性基準」に合格していることが定められているそうです。
また、乗馬やイルカと泳ぐ体験などのアクティビティを行っている施設では、治療をうたっているわけではありませんが、心の癒しを求めて多くの世代が訪れています。