数々のスポーツ番組やバラエティ番組で活躍するフリーアナウンサーの本田朋子さん。現在は家族とともに群馬県に移住し、仕事と家庭の両立に勤しむ日々を送っています。「この土地を楽しまなきゃ損しちゃう」。これまでもあらゆる土地で生活をしてきた本田さんは、その移住生活をポジティブに語ってくれました。環境の変化や多忙な日々も視点を少し変えると豊かなものに。本田さんの美しさと前向きさの秘訣は、“発想の転換”にありました。
「ちょっとだけ」がもたらす生活のハリ
── フリーアナウンサーとして、そして家庭を支える母と妻として。本田さんが家庭と仕事を両立しながら生きる中で、大切にしていることはどんなことですか?
本田さん:今の私のモットーは「頑張りすぎず、でも、ちょっとだけ頑張る」ということ。20代の頃って、仕事はもちろん、自分磨きもすごく頑張っていたんです。
局アナとして忙しい日々を過ごす合間にホットヨガに通ったり、家の周りを毎日ジョギングしたり…。今振り返ると、すごく頑張っていたとは思うけど、その分めちゃくちゃしんどかったなあとも思います(笑)。
── ちょっとだけ頑張る。“ちょっとだけ”というところが真似できそうで、とても励まされます。
本田さん:体力勝負の子育てに勤しむ中、20代よりも頑張るエネルギーが残っていないっていうのもあるけれど、それよりも、自分に負荷をかけないという気持ちが強いように思います。
まったく頑張らないのも生活がだれてしまって心が荒んじゃう。頑張りすぎると、イライラして家族に迷惑かけて、自己嫌悪に陥ってしまう。
そんな中で決して頑張り過ぎない、背伸びしない。できる範囲でちょっとだけ頑張ることが、自分の居心地の良さにつながっているんです。
── 頑張り過ぎない頑張り。具体的にはどんな風に日々に取り入れているのでしょうか?
本田さん:今の私は月に数回お仕事を入れるようにしているので、その時間は目一杯楽しんで、頑張るようにしています。これが毎日だったら、多分頑張れないんですよね。
それは、美容や体型維持も同じ。パーソナルジムに足繁く通わなくてもいいから、お風呂上がりの15分だけは集中して筋トレするとか…。できることをできる範囲で。そういった“ちょっとだけ”の塩梅が生活にハリをもたらし、無理なく自分らしくいられる、私流の秘訣です。
「土地の魅力を深く知る」移住生活の豊かさ
── できる範囲でできることを。その言葉は、コロナ禍という状況でもあらゆることに応用ができるような気がします。
本田さん:そうですよね。今は外出ひとつにも気をつかう時代。私たちは去年の7月に群馬に引っ越してきたのですが、群馬という土地をまだあまり知らないんです。積極的な外出が叶わなくても、ゆくゆくはこの土地のことをもっと知りたい。それは、私たち夫婦にとってはもちろん、息子の子育てにもいい機会になると感じています。
── 夫の移籍に伴って様々な土地で生きてきた本田さんならではの、日々を豊かに生きるヒントですね。
本田さん:そうですね。さまざまな場所に住んだ経験から、土地それぞれに魅力があることや、それに触れることの豊かさを痛感しています。新潟で暮らしていた頃は雪のある生活を経験しながら、地元の食材を食べたり、その土地ならではの文化に触れながら日々を過ごしてきました。
群馬に移り住んでからは、まだ日が浅いので、これからこの土地を知ることが楽しみです。
── 知らない土地で生きることには勇気がいりますが、まだ見ぬ出会いも潜んでいる。そんなポジティブな思考は、転勤やお子さんの転校などで不安を抱く読者の方にとっても心強いものだと感じました。
本田さん:ここでしか経験できないこと、今しかできない体験をすること。そんな時間を家族で過ごしていきたいと思っています。
いろんな土地で生活してきた中で思うのは「この瞬間を楽しまなきゃ、損しちゃう」っていうこと。最初はこの移住続きの生活に戸惑いがありましたが、今はむしろラッキーだなと思っています。
変化に戸惑うよりも今を楽しみたい
── 環境の変化を有意義な機会ととらえること。たしかに、そんな発想は日々を予期せぬ出会いに導いてくれるひとつのきっかけになりうるかもしれませんね。
本田さん:私たちアスリート家族にとって安住の地はないけれど、その代わり思い出の地や出会う人々は増えていく。だから、変化を楽しみに変換していきたい。そんなことを感じています。
いつかは離れてしまうのだから、環境の変化に戸惑っている暇があったら、その土地を好きになれるように出かけて、能動的に好きになる作業をした方が幸福度は上がると思うんですよね。
── 最後に、そんな本田さんが今を生きている群馬で感じていることを教えてください。
本田さん:群馬は、人が明るくて優しい場所だと感じています。お店の店員さん一人にしても、とても温かく対応していただくことが多くて、心細い気持ちになったことが一度もないんです。
子連れでお出かけをしても、穏やかに接していただくことがとても多く、運転している時もよく道を譲っていただいています(笑)。
そんな土地柄に触れる時、毎回とても嬉しい気持ちになるんですよね。若い人がチャレンジしているお店もがたくさんあって、可能性を感じる街。どこにいても、人や街との出会いを大切にしながら、日々を過ごしていけたらと思っています。
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PROFILE 本田朋子さん
1983年、愛媛県生まれ。立教大学在学中に『すぽると!』の大学生キャスターとしてデビュー。2006年よりフジテレビ入社。2013年にプロバスケットボール選手五十嵐圭さんと結婚後、フリーへ転身。
取材・文/丘田ミイ子