本田朋子さん

数々のスポーツ番組やバラエティ番組で活躍するフリーアナウンサーの本田朋子さん。夫でプロバスケットボール選手の五十嵐圭さんの移籍に伴い、昨年より群馬県へ移住。アナウンサーとして人前に立ちながら、家では母として、そしてアスリート妻として家庭を支える日々。環境の変化に戸惑いや葛藤を感じた時期、本田さんファミリーを支えたのは、お父さまからの一通のメールでした。

戦い続ける父だからこそ言えた言葉

── アナウンサーとして人前に出る立場から、母として妻として家庭を支える立場へ。そんな変化の中で戸惑いを感じることなどはなかったのでしょうか?

 

本田さん:

結婚してすぐ名古屋に移り住んで三年近くを過ごし、その後は新潟で五年、昨年からは群馬に。名古屋も新潟も「ここに長くいられたらいいな」と思うほど住み心地がよく、お気に入りの地になりました。

 

だけど、アスリート妻に安住の地はなく、先のことは想像したところで想像通りにならない。ネガティブな意味ではなく、むしろ思い出の地がたくさんできることを嬉しく思っています。与えられた環境の中で目一杯、今を楽しむ。そんな気持ちなんですよね。

 

── 見知らぬ地でも明るく前向きに生きていく。そんな本田さんのポジティブな姿勢に励まされる人は多いと思います。本田さんがそんな風に思えるようになったのには、何かきっかけがあったのでしょうか?

 

本田さん:

いちばん身近な人間だと父の存在が大きいですね。父は自分で起業・経営をしながら、逆境でも常に自分を信じて突き進むタイプの人で、母からもよく「お父さんはいつも戦っている人」と聞かされて育ってきました。

 

多くのものを背負いながら自分を信じて突き進んでいくことは、並大抵の努力でできることじゃない。そんな父が折々にくれる言葉はとても感慨深いものでした。

 

── どんな時にどんな言葉をかけてもらったのでしょう?

 

本田さん:

メールでその一文をポンっと、送ってくれたんです。いきなり主人の移籍が決まり、環境や状況の変化に戸惑いを感じていた時期でした。そんな時に父がかけてくれた言葉は二つ。

 

一つは「人間万事塞翁が馬」。「幸か不幸かは後々にならないとわからない」という意味の古事成語です。

 

もう一つは、「骨を埋める場所はどこにでもある」という意味の「人間到る処青山有り」という言葉でした。

 

── アスリートとして生きる夫とアスリートの妻として生きる本田さん。お二人にとってとても心強いお言葉ですね。

 

本田さん:

アスリートである限りは、こういう生活が半永久的に続くのだろうなと思います。

 

だけど、苦しい時間も後々になってみれば、より良い今を作る通過点になる。輝ける場所はどこにいても必ずある。そんな父からのメッセージのおかげで、環境の変化にも気落ちせずに、家族で支え合って生きることができています。

 

この二つの言葉はじわっと心に届くものがあって、今でもよく思い出しています。

 

── 娘の状況や心情を察して、そんな言葉を贈れるお父様はとても頼もしく、かっこいいです。

 

本田さん:

調べてその言葉の意味が初めて心に響いたとき、戦い続けてきた父だからこそ言えた言葉だったんだなと感じました。

 

だから、今の生活には戸惑いも迷いもありません。ここまでくると、もうどこの地に行っても楽しめる気がしていて、自分でもすごくたくましくなったと思います。

 

家族がそばにいて元気であれば、どこであってもハッピーに生きていける。そんな自信がつきました。

42歳現役」今日もコートに立つ夫を誇りに思う

本田朋子さん
家族がそばにいればハッピーだと語る本田朋子さん

── 夫の状況はもちろん、局アナからフリーへ転身され、アナウンサーとして新たなキャリアを重ねるといった本田さんご自身の葛藤にも響くお言葉だったのですね。

 

本田さん:

フリーになりたての頃は「フリーとしての結果を残さなきゃ」と思っていた時期もありました。遠方に住んでいるという状況や、主人の試合前に仕事を入れたくないと思う気持ち。そんな中で仕事を選ぶ葛藤はありました。

 

「なんでもやります」と言えたなら、もっと多くのことを経験できたかもしれない。それでも、この優先順位に揺らぎがなかったのは、これまでの仕事への達成感と、これからの自分がどう生きたいかというビジョンが明確だったからだと思います。

 

── 仕事でやりたいことは20代ですべてやりきった。先に公開されたインタビューでもそんな言葉がありましたね。

 

本田さん:

そうですね。そのことに加えて、主人が試合で活躍する姿を見るとやっぱりとても嬉しくて、「私の選択はこれでよかったんだ」と自分の生き方に更なる自信を持てるようになりました。

 

主人は今年42歳になるんですけど、この年齢になってもバリバリ現役を続けている姿はとても頼もしく、かっこいい。主人の歩んだ道も、今までの自分も間違っていなかったんだなって思えます。

 

── 夫婦で支え合いながら、よりよい今を築いていくこと。本田さんファミリーの指針にはそんなチーム感を感じます。ちなみに、夫婦喧嘩などはないのでしょうか?

 

本田さん:

もちろんありますよ!

 

お互いひとり暮らしが長かったので、結婚当初は生活スタイルや価値観のすり合わせを行う中で喧嘩もたくさんしました。

 

息子が1歳くらいの時だったかな。互いのちょっとした言い方に苛立って、公園に遊びに行った時に二人ともプイッとしていたことがあったんです。

 

そしたら、まだよちよち歩きの息子が二人の手をとって引き寄せてくれて。「こんな小さな子でも夫婦の空気を読み取っているんだ」と思ったら、子どもの前では喧嘩しちゃダメだなって思いましたね。

 

息子だけでなく、犬もちょっとした雰囲気を嗅ぎ分けて駆け寄ってくるんです(笑)。そんな二人が家族の緩和剤になってくれることもあって、今は毎日が穏やかなものになっています。

 

PROFILE 本田朋子さん

1983年、愛媛県生まれ。立教大学在学中に『すぽると!』の大学生キャスターとしてデビュー。2006年よりフジテレビ入社。2013年にプロバスケットボール選手五十嵐圭さんと結婚後、フリーへ転身。
取材・文/丘田ミイ子