本田朋子さん

スポーツやバラエティなどあらゆる人気番組で活躍するフリーアナウンサーの本田朋子さん。現在は、夫でプロバスケットボール選手の五十嵐圭さんの移籍に伴い家族の拠点を群馬に移し、3歳の息子さんの子育てに奔走中です。今回は、そんな結婚と出産というターニングポイントについてお話を伺いました。「家庭がいちばん大切」。迷いのない本田さんの言葉の奥には、孤独と多忙に涙しながらもがむしゃらに働いた過去の姿が在りました。

孤独を感じながらも走り続けた独身時代

── フジテレビアナウンサーとして活躍したのち、フリーに転身。現在は仕事のかたわら一児の母として、アスリート妻として、家族を支える本田さんですが、仕事と家庭の両立はどのように工夫されていますか?

 

本田さん:

今の私の生活は家庭が中心。お仕事はその合間を縫って月に数回入れるようにしています。息子が生まれてからは特に、生活のすべてが息子ファーストになりました。

 

働き方も時間の使い方も変化して、子育てや家庭に支障が出ない程度に自分がやりたいことや仕事を引き受ける形で両立をしています。

 

そういったことが苦ではなく、むしろ嬉しい。今の自分の選択や生き方に心地良さを感じています。

 

── 結婚や出産を経た女性の中には、「自分の時間が欲しい、もっと働きたい」。そんな言葉を口にする方も多くいらっしゃいますが、本田さんがそういったジレンマを抱えることはなかったのでしょうか。

 

本田さん:

局アナ時代に身を粉にして働く日々を送り、やりたいことはすべてやりきったという達成感が大きいので「家庭がいちばん」という優先順位が揺らぐことはないんです。

 

むしろ、都会で一人暮らしをしていた独身時代は、職業柄、人とは違う生活時間帯に働いていることもあって、孤独を感じることが多かったんですよね。

 

サポートしてくれる友達も同僚もいるけれど、家に帰ったらひとり。マンションの窓から星を見ながら涙を堪える、みたいな夜を結構過ごしてきたので(笑)。

「ひとりじゃない」と思える幸せ

本田朋子さん
家庭がいちばんと心から思いますと本田さん

── 孤独な時間があったからこそ、今の生活の喜びを大いに噛み締められるのですね。

 

本田さん:

家族と一緒に過ごす幸せが、私にとっていちばん大切なこと。そんな明確な優先順位があるからこそ、働き方にも迷いがないんです。

 

逆に言うと、孤独の経験や仕事への達成感がなければ、知らない街を点々とする今の生活に挫けていたかもしれないし、家庭や仕事への優先順位もこんなに明確には持てなかったかもしれない。そういう意味では、孤独を感じながらも走り続けた時代があってよかった。

 

── 本田さんにとって、家族との出会いは生き方を変える大きなターニングポイントだったのですね。

 

本田さん:

20代は自分に自信がなく、不安だらけで、だからこそ頑張るしかなかった。でも、疲れ果てながらも存分に仕事に打ち込んだことで「やりきった!」という実感が持てました。スポーツの国際大会やオリンピックにも行かせてもらって、アナウンサーとしての目標がひと段落したような気持ちです。

 

そんな達成感から「30代は自分のために生きよう」と生活スタイルを自然に切り替えることができたのだと思います。主人に出会い、家族に恵まれたことで心が安定して初めて、過去の自分に自信が持てたような気がしています。

出産は生放送 その心は「いつかは必ず終わる!」

── ストイックにタフに働いてきたご経験が、本田さんの今を揺るぎないものにしているのですね。子育ての中でもそんな経験が活かされていると感じることはありますか?

 

本田さん:

アスリートである主人の移籍に伴って住む場所や環境が変わることはありますが「なんとかするぞ」と気概を持てること。これは、局アナ時代にあらゆる困難を乗り越えてきたからこそ得られた、ハートの強さだと思います。

 

家族がいるからどこでもやっていける。ひとりじゃないんだ、という心強さはとても大きいと感じています。あと、意外なところで発揮されたのが、生放送で培った本番での強さでした。

 

── 家庭での「本番」とは、どんな瞬間でしょう?

 

本田さん:

ズバリ出産です!息子は難産で、陣痛にも長く苦しみ、頭が出てこなくて吸引や切開も施しました。そんな波乱に満ちた出産も「生放送と同じ、いつかは終わる!」という気持ちで

 

局アナ時代、多少原稿を噛んでも乗りきることから「押しきり朋子」と異名がついていたのですが、分娩室でもその意気込みを発揮しました(笑)。

 

── なんと頼もしい母でしょう!

 

本田さん:

主人だけでなく、友人にも立ち会ってもらった出産だったので、「なんとか無事に終わらせなければ!」という使命感があって。叫びたい気持ちはあったんですけど「見られているのだから、見苦しい姿は見せられない」と、生放送と同じ気持ちで挑みました。

 

長丁場の本番でしたが、ほとんど言葉を発さず、とにかくお腹に力を入れることに徹した、私らしいストイックな出産になりました。まさかこんなところでアナウンサー魂を発揮するとは! 

 

PROFILE 本田朋子さん

1983年、愛媛県生まれ。立教大学在学中に『すぽると!』の大学生キャスターとしてデビュー。2006年よりフジテレビ入社。2013年にプロバスケットボール選手五十嵐圭さんと結婚後、フリーへ転身。
取材・文/丘田ミイ子