本田朋子さん

数々の人気番組で活躍するフリーアナウンサーの本田朋子さん。異例の大学生キャスターとしてデビューした後、フジテレビへ入社。華やかで完璧に見えるそのキャリアの裏には、人知れず抱えた、ある悩みがあったそうです。苦悩の末に本田さんが辿り着いた答え。そこには、社会の中で生きづらさを覚えるすべての人に通じるメッセージがありました。

大学生キャスターからフジテレビの局アナへ

── 人気スポーツ番組『すぽると!』の大学生キャスターとして異例のデビューを果たしたのち、プロの道へと進むべくフジテレビへ入社。その決断には、どんなきっかけがあったのでしょうか?

 

本田さん:

大学生キャスターという立場でMCをやらせていただいていた頃は、大ベテランの三宅正治アナや内田恭子アナの親身なフォローのもと、天真爛漫に一年を過ごさせていただきました。

 

「スタッフさんと一致団結して番組を作り上げる」という一体感の中でも、当時の自分はまだお客さんのような立ち位置。先輩方のプロフェッショナルな背中を追いかける中で「私もこのチームの一員になりたい」という思いが次第に強くなっていったんです。

 

── そこからアナウンサー試験に合格し、今度はプロのアナウンサーとして再び『すぽると!』のMCに抜擢をされました。立場が変わることに伴って心境の変化もあったのではないでしょうか?

 

本田さん:

そうですね。フジテレビの局員になり、夢見た「チームの一員」になれたわけですが、同時に大きなプレッシャーを感じるようになりました。

 

局を背負う責任はもちろん、大学生の時の自分と比較されるという、過去の自分からのプレッシャーもあって、入社12年目はとても苦しかったです。

 

どんな自分でいたらいいのかがまったく分からなくなって、自分の存在意義について悩みました。大学生の頃を知る上司の方にも「今の笑顔はひきつっているし、昔の方がよかった」と言われたりして

 

── 他者との比較も辛いものですが、今の自分と過去の自分の挟み撃ちに遭うことはいっそう辛いことのように感じます。

 

本田さん:

上司の言葉はまさに図星で、自分でも分かっていたことだったので、余計に落ち込みました。「自分らしさ」というものを見失って苦しんだ時期でした。

 

そんな私をずっと見守ってくれていたのが、大学生の頃からサポートして下さっていた三宅正治アナです。一つひとつを細かく指摘するのではなく、三宅さんの大船に乗らせてもらって、見守られながら育てていただきました。

 

そんな大先輩の姿を見て「なんとかその背中についていきたい」とがむしゃらに走りましたね。

「目立つこと」だけが「キャラ」じゃない

本田朋子さん
自分らしさについて悩んだ時期もあったという本田朋子さん

── 局アナになってからは担当する番組も増え、バラエティ番組を進行する姿も印象的でした。

 

本田さん:

「本田ってキャラがないよね」「自分らしさをもっと出した方がいい」。仕事のジャンルは増えましたが、たびたびそういったこと言われていたんです。その度に、自分らしさってなんだろう、キャラってなんだろう、私にキャラなんかないよねって、ずっと悩んでいて

 

あらゆる試行錯誤の末に私が辿り着いた結論は、無理に前に出たりせず、与えられた仕事をしっかりこなすこと。「それこそが私の自分らしさなんだ」と思えるようになってからは、仕事への眼差しや姿勢にも変化が現れました。

 

── 具体的にどんな変化があったのでしょうか?

 

本田さん:

共演する演者さんたちが気持ちよく収録できるように裏回しに徹したり、オンエアにはのらない現場進行に徹したり、そういった半分裏方のような仕事に回ることで「自分らしさ」を獲得できたと感じています。

 

そういった積み重ねによって、スタッフさんからの信頼も得られるようになり、同時に自分も現場で息がしやすくなったような。

 

「キャラ」って別に目立つものでなくていい。自分ができることをただひたむきに。あらゆる葛藤を経て、そんな初心に戻れたような感覚でした。

失敗を重ねながら、いつの間にか身についた度胸

── アナウンサーのお仕事は、テレビに映っている時間以外にもたくさんあるのですね。同時に、一発本番の生放送のお仕事もあるかと思うのですが、そんな中で失敗してしまったことなどはなかったでしょうか?

 

本田さん:

めちゃくちゃあります!私はときどき微妙な噛み方をしちゃうので、毎回ハラハラしていました。「キャラに苦しんだ」と言いつつ、『すぽると!』では、「噛んでも押しきって原稿を読む姿」にちなんで、おしきり朋子という異名がついたくらいでした(笑)。

 

「大相撲の春場所、横綱・朝青龍」という原稿を、「はるばそ」と噛んだうえに「あさそうるう」とさらに噛んで、押しきりに押しきりを重ねてしまい。隣にいた先輩の平井理央アナが堪らず笑ってしまった姿がカメラに映って、平井アナが叱られてしまうなんてことも

 

── 異名を裏づける、印象的なエピソードですね(笑)。

 

本田さん:

その後、三宅さんが「あれは、本田が噛んだからだよ」と誤解を解いてくださり、平井先輩にもきちんと謝って。私の奔放な性格を色濃く残した、やらかしエピソードでした(笑)。

 

そんなこともあって生放送ではいつも緊張していましたが、同時に「時間がきたら必ず終わるのだから、失敗を恐れず動じないで挑もう」という意気込みも持っていました。

 

今思うと、さまざまな経験を経たキャリアの中で、次第に度胸が身についていたのかなとも思います。

 

PROFILE 本田朋子さん

1983年、愛媛県生まれ。立教大学在学中に『すぽると!』の大学生キャスターとしてデビュー。2006年よりフジテレビ入社。2013年にプロバスケットボール選手五十嵐圭さんと結婚後、フリーへ転身。
取材・文/丘田ミイ子