自分の子どもなのに、あまり関心を持たない夫もいれば、関心を持ちすぎる夫もいます。いずれにしても妻としては不安を感じます。今回は「やたらと学校行事に前のめりな夫」に対して困惑する妻という図式。

父兄参加の種目で勝つためにジョギングを始める夫

29歳で結婚してすぐ妊娠したとき、カヨさん(41歳・仮名=以下同)の夫は大喜びしたそうです。

 

「夫は6歳年上だったので、当時、35歳。結婚前から、子どもの保育園や小学校の運動会に出られるかなあと心配するくらい、子どもを楽しみにしていたようです」

 

実際、1歳間近で保育園に預けたとき、夫は半年後の秋の運動会をすでに待ち望んでいたといいます。中高生時代は陸上部で、体力には自信があると言い切りました。

 

「ところが、ふだんの運動不足が気になったようで、夏前からジョギングを始めました。

 

1歳児の運動会なんてたいしたことをしないだろうと思ったんですが、夫は『息子に恥をかかせたくない』なんて言っちゃって(笑)。まだ、わかるわけないのにね」

 

当日の競技は、子どもを箱に入れて保護者がひっぱって早さを競うもの。夫は途中でつまづきそうになって2位に。これが、夫の心に火をつけたようです。

他の親とのメーリングリストも率先して作っちゃう

来年はもっとブッチギリで勝つ、と。運動会だけじゃないんですけどね。

 

保育園は共働きが多く、他の親御さんとコミュニケーションがとりにくいんですが、夫は当時からメーリングリストを作るなど積極的に園側、親側に働きかけていました」

 

続いて長女も生まれ、やはり保育園に入れましたが、空きがなかったため長男とは別の園に。

 

毎日、2つの園の送り迎えは大変と嘆いたカヨさんに、夫は「別々の運動会に出られるぞ!」と張りきったそうです。

 

「息子が5歳くらいになると、『おとうさん、目立ちたがりやだよね』と言うようになって、私は大笑いしました。

 

そうなんです、実は夫、自分が目立ちたい。『Aくんのおとうさん』ではなく、『あのおとうさんの子がAくんか』と言わせたいんですよ」

 

コロナ禍前、運動会ともなれば夫は最前列の席をとるため、夜中の3時頃から保育園に並びに行くほど前のめり。その熱意だけは驚かされたとカヨさんは言います。

 

子どもたちも大きくなると、そんな父親が少し煙たくなってきたようです。

 

「息子が小学生のとき、夫はクラスの保護者の連絡役を買ってでたんですが、些細なことでもすぐに一斉メールで連絡をするので、『重要度がわからない』とクレームが来たくらい」

 

小さなことでも連絡を流すのが自分の役目だと夫は言って、子どもには関係のない学校の工事関係のことまでメールする様子。それはうっとうしがられますよね」

夫が張り切るのは自身の幼少期の経験から

今年は長男が中学に入学します。ということは、もうじき小学校の卒業式があるということです。カヨさんも長男も、その日を少し恐れているようす。

 

「保育園の卒園式で、夫は号泣しまして。気持ちはわかるんだけど、ワンワン泣くのはちょっと。おそらく小学校の卒業式も同じことが起こるんじゃないでしょうか」

 

ただ、ずっとそんな夫を見てきて、カヨさんはふと思うことがあるといいます。

 

「夫は8歳のときに父親を亡くしているんです。母親が美容師として店を持ち働いていたので、学校行事にはまったく来なかったそうです。

 

しかたないけど、寂しかったんだよと夫が漏らしたことがあります。彼の行動は、自分が親にしてもらいたかったことなのかもしれません。

 

忘れ物を取りに行くような感覚なんでしょうね。結果、自分が目立ちたいのも子どものころにできなかった、やり直している気持ちなんでしょう」

 

だから夫に「そんなに前のめりにならないで、とは言えない」とカヨさん。

 

ただ、すでに父親の行動を醒めた目で見る子どもたちが本格的な思春期を迎えようとする今、いったいどう思うか、夫はそれを想像できるのか、少し心配になることがあるそうです。
文/亀山早苗 イラスト/前山三都里 ※この連載はライターの亀山早苗さんがこれまで4000件に及ぶ取材を通じて知った、夫婦や家族などの事情やエピソードを元に執筆しています。