冷蔵庫のシール剥がしに挑む女性

年末の大掃除では、「いつかはやろう」と思って気になっていた場所の汚れも、まとめて落としたいですよね。とくに、小さな子どもがいると壁や家具の落書き、冷蔵庫のシールは気になるところ。ただし、落とすのが大変そうだし、できたらやりたくない…。汚れ落としのプロ・茂木和哉さんなら、どうするのでしょうか。

シール剥がしには「D-リモネン入りの洗剤」がおすすめ

── シール剥がしに使う洗剤選びのポイントを教えてください。

 

茂木さん:

粘着性の高い汚れには柑橘類に含まれている「D-リモネン」という成分が入っている洗剤がおすすめです。D-リモネンは濃度が高いほど汚れがよく落ちますが、一方で濃度が高いとプラスチックまで溶かしてしまうのでシールを貼っている素材によって使い分けが必要です。

 

高濃度のD-リモネンが含まれている洗浄液は瓶や缶入りです。剥がれにくいシールをしっかり落とすには、D-リモネン配合で瓶か缶の容器に入っている中性洗剤を選ぶといいでしょう。濃度は瓶か缶入りなら高濃度、スプレーボトルなら低濃度です。

 

洗剤を染み込ませた綿棒を使い、シールのフチからしっかり洗剤を染み込ませます。シールは表面がコーディングされていて洗剤が染み込みにくいため、染み込ませたらしばらく放置しましょう。あとは簡単に剥がれるので最後は乾拭きをすればおしまいです。

 

もし、高濃度のD-リモネン入り中性洗剤を使うことや洗剤残りが気になるなら、桶などに水を張って台所用中性洗剤を数滴垂らして布巾で拭いた後に、最後は水拭きで仕上げてください。

「中性洗剤」を勧める理由と注意点

── D-リモネンが入っていれば何性の洗剤でもいいですか?シールは粘着性があるので強い洗剤を使えば簡単に汚れが落ちそうです。

 

茂木さん:

有機溶剤など強い洗剤を使いたくなりますが、小さなお子さんが貼っている場所なら、今後もお子さんが触る可能性が高いですよね。だから、安全性が高い洗剤を使ったほうがいいでしょう。

 

D-リモネンも種類としては溶剤ですが天然由来で安全性が高いです。あとは浸透性も大事。D-リモネンそのものにも浸透力がありますが、界面活性剤も含まれているとさらに浸透性が高いのでおすすめ。

 

 

D-リモネン入りの中性洗剤にもさまざまなものがありますが、注意したいのが木製家具です。水拭きしても影響のない木材なら大丈夫ですが、ニスやワックスなどが塗られているとそれらの塗料まで落ちてしまう可能性があります。

 

またD-リモネン配合の中性洗剤は、他にも黒いプラスチックのこすれ跡やゴムの色移りにも効きます。ランドセルをこすってついた、壁紙の汚れにも効果的なのでぜひ試してみてください。

クレヨンや油性ペンの落書きの消し方のコツ

── 壁紙と言えば、子どもが描いたクレヨンや油性ペンの落書きも子育て世帯の悩みのタネです。消せるものなのでしょうか?

 

茂木さん:

描いてから数日以内など時間が経っていない汚れなら、中性の台所用洗剤でもある程度は落ちます。ただ頑固な汚れだと溶剤を使ったほうが効果的。ただ安全性を考えると使える道具は限られてきます。

 

 

そこでまず試してみるのは、除菌用アルコールスプレーを吹きかけた布巾で拭く。これでは汚れが落ちない可能性もありますが、台所洗剤よりは効きます。

 

それでダメなら除光液を使います。長く壁紙に浸けておくほど汚れ落ちはよくなりますが、壁紙の素材や放置時間によっては壁紙が傷む可能性もあります。個人でやらずに業者に頼むのも一つの選択肢だと思います。

※今回紹介した掃除方法は茂木さんおすすめの方法です。住宅設備などによって然るべき掃除方法が異なる場合がありますので、それぞれ利用上の注意などを読み、各自の判断で行ってください。 

 

PROFILE 茂木和哉さん 

秋田県出身。独学で掃除と洗剤作りを学び、汚れ落とし歴25年の経験を活かして情報発信や自分の名前をつけた洗剤を多数開発。著書に『茂木和哉 落ちない汚れをラクに落とす掃除術』がある。  

取材・文/角みやこ イラスト/かりた