矢沢心さん

「うちの夫は意外と、家事能力が高いんです」と話すのは、タレントの矢沢心さん。夫の魔裟斗さんは、手のたりていない箇所を見つけてはみずから率先して家事を済ませてくれるのだそう。なんと羨ましい!

 

多忙な矢沢さん・魔裟斗さん夫婦の家事分担のやり方や交渉術(!?)を伺いました。

15年かけて「できないことを補える」関係に

── 3人のお子さんの育児と家事、ご自身のタレント活動と、多忙な毎日をお過ごしかと思います。魔裟斗さんもさまざまな活動に精力的に取り組まれていて、お忙しいでしょう。家事分担はどのように決めているのでしょうか? 

 

矢沢さん:特に分担を決めるということはしていないんですよ。もともと“お互い、できないことは補い合って調整していこう”というスタンスでやってきたので、特に“これをしてほしい”とか“ここは助けてほしい”と伝えるわけでもなく、気づいたほうができることをやるというのが、わが家のスタイルです。

 

とはいえ、私のほうが家にいる時間が長いこともあり、当初家事は私の担当でした。それが、子どもの数が増えるに伴って、彼も率先して参加するようになったんです。

 

私が子どもの世話で忙しくしていると、その間に掃除機をかけたり、お風呂掃除を済ませてくれたり、私の手荒れに気づいて食器を洗っておいてくれることも。特に言葉で伝えなくても、手のたりない箇所を見つけて、家事を済ませてくれます。

 

夫は基本的にマメなタイプで、じっとしているよりも動いていたい人なので、助かっています。ただ、洗濯だけは苦手らしく、ずっと私の担当です(笑)。

 

矢沢心さん

── お互いの動きに目配りができていないとスムーズにはいかないものですが、さすがのチームワークですね。家事能力が低いパートナーの言い分でありがちなのが、「何を手伝えばいいかわからない…」というもの。結局、足手まといになって妻のストレスが増えるというケースも少なくありません。

 

矢沢さん:確かに、夫の家事能力は昔と比べてずいぶん上がったと思います(笑)。やっぱり子どもが増えるにつれて、部屋も散らかるし、洗濯物の量も多くなって家事が大変になるので、ふたりでやらないととても追いつかない。そうなると、経験値も上がりますよね。

 

そもそも夫は綺麗好きで、帰宅したときに家が散らかっていると落ち着かないタイプ。そこは私も同じなので、“汚れ物はためない”“出かける前にはサッと片づける”ことは、暗黙のルールとしてお互い自然にやっています。

意見が違うこと、伝えたいことは少し時間を置いてから

── 話を伺っていると、すごく仲の良い様子が伝わってきます。夫婦喧嘩をすることは?

 

矢沢さん:もちろん意見が食い違うことはあります。でも、言い争いの喧嘩をしてぶつかるということは、ほぼないですね。“これだけは伝えなくては”ということはきちんと話し合うけれど、そのときもできるだけ感情的にならないように気を付けています。たいてい、その場で言うのではなく、お互いが冷静になったころを見計らってから話をするようにしていますね。

 

矢沢心さんと魔裟斗さん

── どんなふうに伝えるのですか?

 

矢沢さん:例えば、相手の発言で納得いかないことがあるとしますよね。そのときは、“あなたはあのとき、ああいうふうに言ったけれど、私は今こういう状況だからできないんだよ”と相手が納得できる理由を伝えたうえで、“私はこんなふうに思ってるよ”と自分の意見や気持ちを話します。

 

そういえば産後少し経った頃、夫から“そろそろ体を鍛えていかないとね”と促されたこともありました。日頃から身体のメンテンナンスに対してストイックに取り組んでいるだけに、良かれと思っての発言だったのはわかります。でも、当時の私は子育てでいっぱいいっぱいだったし、体調も万全ではなくて。

 

だから、“私はひとつのことに向き合うのが向いているタイプだから、同時にはできない。でも、子育てがもう少し落ち着いたら、本格的に始めようと思ってるよ”と率直に伝えました。そうしたら、ちゃんと理解してくれましたね。

 

とはいえ、体が資本なので、子どもを抱っこしながら階段をつま先立ちで登ってみたり、家の中で活動量を増やしてみたり(笑)。生活の範囲内でできることには取り組むようにしています。

「認め合う心と都合よく忘れる脳」があればうまくいく

── 夫婦がずっと仲良くいるために、矢沢さんが大切にしていることは何でしょうか?

 

矢沢さん:相手の存在を尊重する、認めるって、やっぱりすごく大事だと思いますね。いちばん近くにいる人に認めてもらえるって、嬉しいじゃないですか。生きるうえでのエネルギーになる気がします。

 

それこそ、他人にはわからないような小さな変化にいち早く気づいて伝えてみたり。夫の場合は、ずっとストイックに体を鍛えているので「今度はこの部分を鍛えているんだね。筋肉がいい感じでついてきてる」と声をかけたりします。

 

矢沢心さん

── “ちゃんと見てくれているんだな”と感じられ、張りあいが生まれそうです。夫婦として長く過ごすうちに、子どもが最優先になってパートナーの変化に鈍感になりがち。だからこそ、気付いてもらえると、存在を認められているようで嬉しいですよね。

 

矢沢さん:だといいです。もうひとつ、あまり物事をきっちり考えすぎず、適度な緩さをキープすることも、お互いラクでいられる秘訣だと思います。

 

子どもが3人いると、日々のやるべきことに追われて余裕がまったくないので、いろんなことを忘れちゃうんですよね。夫には「なんか都合よく忘れるよね?」と言われますが(笑)、逆にそれがいいのかもしれないなと。

 

“あのとき、こんなことを言われて嫌だった”とか“こんなところがイラっとした”と、いちいち覚えていると疲れてしまうけれど、“でもこんな素敵なところがあるから、まあいいか”“こんなことをしてくれて嬉しかったな”と、いいことでどんどん上書きしていく。

 

そんな“都合のいい脳”でいることで、イライラすることもなく、毎日笑っていられるのかなと思うんです。

 

PROFILE 矢沢心さん

1981年、東京生まれ。女優、タレントとして幅広く活躍するほか、プロテクトスキンボディバーム「LE MERA」のプロデュースを手がける。2007年に元K-1世界王者の格闘家、魔裟斗さんと結婚。自身の不妊治療経験を綴った著書に、『ベビ待ちゴコロの支え方』(主婦の友社)など。オフィシャルブログ『コロコロこころ』でも不妊治療の情報を発信。

取材・文/西尾英子 撮影/松村隆史 スタイリスト/田中トモコ(HIKORA) ヘアメイク/八角 恭(nude.)

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