赤ちゃんを抱っこする女性のイメージ
赤ちゃんを抱っこしていたら骨折をした──。女性にとって、大きなライフイベントでもある妊娠・出産時期には、一時的に骨粗鬆症になる可能性があります。

 

この時期、注意したい「妊娠後骨粗鬆症」とは?原因と予防について、順天堂大学医学部附属練馬病院で、小児整形と骨代謝性疾患(骨粗鬆症など)を専門にしている坂本優子先生に伺いました。

抱っこで骨折、背骨が折れた…妊娠後骨粗鬆症に注意

赤ちゃんを抱っこしていたら背骨を骨折したり、お世話をしていたら大腿骨のつけ根が折れたり…。

 

信じられない話ですが、産後は、赤ちゃんを抱き抱えるなどのちょっとした負荷によって、骨折してしまうことがあります。

 

このような妊娠や授乳に伴う一時的な骨粗鬆症のことを「妊娠後骨粗鬆症」といいます。報告数としては多くないものの、女性の方はぜひ知っておいて欲しい病気のひとつ。

 

骨折してしまうと、抱っこやお世話などの育児はもちろん、日常生活にも大きな支障をきたしてしまうことも。産後は特に自分のことが後回しになりがちですが、注意していただきたいと思います。

妊娠・授乳期に骨が弱まる理由とは?

まず、妊娠・授乳期に骨粗鬆症を引き起こす要因のひとつに、カルシウム不足があります。

母体のカルシウムが赤ちゃんに届けられる

母体は赤ちゃんを優先するようにできています。妊娠期は母体から胎児へ、授乳期は母乳を通して赤ちゃんに栄養が届きます。

 

このとき、カルシウムも母体から赤ちゃんへと届けられますが、母親がカルシウムの摂取不足の場合は、母親の骨からカルシウムを溶かして赤ちゃんに届けられてしまうのです。
さらに、自身の体の中で起きている自分の骨を作り出すサイクルにも悪影響が生じます。

 

カルシウムは、体内に貯めておくことができません。特に授乳期は不足した状態が続きやすいので、意識的に摂取しましょう。

骨密度の変化に関与する「エストロゲン」

妊娠中は女性ホルモンのエストロゲンの分泌が増えるため、骨量が維持されやすい時期ですが、出産後の授乳期は無月経となるため、エストロゲンの分泌が減少。

 

骨密度が低下しやすく、授乳期は骨折の可能性が高まります。

 

ただし、妊娠・授乳期の骨密度の変化は一時的なもの。授乳を終えて生理が再開すれば、エストロゲンの分泌量は戻り、母体の骨密度も妊娠前の数値に徐々に回復します。

 

授乳期間が1年ほどであれば心配はないですが、1年以上授乳を続ける場合は、無月経の期間が長くなってしまいますよね。

 

そうすると、骨密度の低下状態が続くほか、骨密度の戻りが悪くなる可能性も。骨粗鬆症のリスクが高まるので注意しましょう。

 

特に気をつけていただきたいのは、無理なダイエットを繰り返していた方、拒食症だった方など妊娠をする前から骨量が低かった方。

 

生活が乱れ、骨密度が不足したまま妊娠・授乳期を迎えると、骨密度がさらに下がり、骨粗鬆症に陥る場合もあります。

「妊娠期骨粗鬆症」予防にはスキムミルクも便利

妊娠期や授乳期は、赤ちゃんのためにも自分のためにも栄養の必要量が増えるとき。健康な骨を作るために必要なカルシウムやビタミンDは、普段よりも意識して摂る必要があります。

 

牛乳はカルシウムを効率よく摂ることができますが、授乳期は乳腺炎を気にして避ける方もいらっしゃるかもしれません。

 

対策としては、無脂肪乳や低脂肪乳を選んだり、毎日飲む水を硬水にしたりするといいでしょう。

 

他には、スキムミルクや、お子さん用のフォローアップミルクもカルシウムが豊富に含まれているので便利です。
一緒に飲んだり、余っているものを料理に活用したりして摂取するのもいいですね。

子どもや家族の骨の健康も考えよう

妊娠・授乳期は、母体の骨密度について向き合って欲しいのはもちろんですが、同時にこれから成長する子どもの骨の健康も考えましょう。

 

日本では長年の間、いかに高齢者の骨を骨折から守るかに意識を注いできました。

 

しかし、若い方や子どもたちの親世代は骨の知識がほとんどありません。知るのは骨折をして診察室に来てからなんです。

 

医師が診察室で待っていてもこの現状は変えられません。成長期の子どもや若い世代、子どもたちの親世代にこそ、元気な骨を作る正しい知識を知って欲しいと思っています。

 

厄介なことに、骨の健康や骨密度の低下は、自覚症状がないため自分では気づくことができないもの。

 

当事者意識を持つために、一度、骨密度検査をしている病院で測定してみるのもおすすめです。

 

また、多くの自治体では、40才以上の女性を対象に、骨粗鬆症検診を行っていますので、ぜひ一度受けてみてください。

 

骨が丈夫でなければいつまでも元気に過ごすことはできません。早いうちから意識を高めておけば、予防だけでなく、改めて生活習慣を見直すきっかけにもつながるはずです。

 

PROFILE 坂本優子

群馬大医学部卒業。順天堂大附属練馬病院 准教授。日本で初めて設立された小児・AYA世代ボーンヘルスケアセンター長を務める他「チームボーン」として骨の健康を啓発。専門は小児整形外科、骨代謝。

取材・構成/CHANTO WEB編集部