「ごはんと旅は人をつなぐ。」をテーマに、おいしいごはんや素敵な旅を通じて、人と人を繋ぐ。そんな活動をしている料理家・ダーダこと山田英季さんによる、連載エッセイ。

 

山田さんが「とにかく、今これが食べたい気分」な美味しいレシピを、作っているときの熱量も一緒にお届けします。

#09「梅雨をのりきる初鰹とトマトのパスタ」

夕方が蒸し暑く、薄暗くなった街並みを雨の香りが通り抜けると、梅雨の訪れを感じる。この時期は、あまり好きではないけれど、梅干しを漬けるようになった数年前から、楽しみのある季節になりました。

 

さて、そんな梅雨のもう一つの楽しみが、「初鰹」です。餌をたらふく食べてまんまるに太った秋の「戻り鰹」よりも、さっぱりとした味わいの「初鰹」は、油との相性がよいのです。

 

生はもちろんおいしいけれど、オリーブオイルでさっと炒めてパスタにするのが、僕の好み。

 

まずは、お刺身用のかつおを包丁で叩いて、荒いミンチにします。このまま白米の上にのせ、卵黄、ごま油、醤油をかけて、食べたい気持ちになるが、そこはグッとがまん。

 

フライパンにオリーブオイルとにんにくを入れて、イタリアン料理店のようなおいしい匂いがするまで弱火で炒めます。

 

そこへ初鰹のミンチを加え、塩をひとふりして、ほぐしながら炒めます。

 

この工程で、かつおは「最高級のツナ」へと生まれ変わります。多めに作って常備しておけば、パスタ以外にもチャーハンやサラダの具に使えたりも。

 

かつおが白っぽくなり、火が通ってきたら、ミニトマトを加えて、潰しながら炒めます。パスタもこのときにゆではじめましょう。

 

実はここで、みなさんが大好きなおいしい化学反応がおこっています。それは、かつお節と昆布がおりなす「うま味」のつまった「合わせだし」。かつおは、かつお節と同じ「イノシン酸」といううま味をもっています。そして、なんとトマトは、昆布と同じ「グルタミン酸」といううま味を多くもっているのです。

 

そしてそして、なんとのこの「2つのうま味」は合わせることで、「うま味が8倍」になるそうなんです。

うま味の海にイタリアの風を吹かせるために、イタリアンパセリと黒こしょうを加え、白ワインとゆで汁も加えます。

 

パスタのゆで時間を確認しつつ表示時間より1分程度早くゆで上げ、イタリアのうま味ソースに加えて。ベストなアルデンテになるよう、ソースを吸わせながら炒めます。

 

仕上げに、フレッシュなオリーブオイルの香りをたせば、絶品パスタの出来上がり。

6月の台所三箇条

  • 梅雨に入ったら、スーパーで初鰹を狙う。
  • イタリアンに仕上げで、ジメジメした不快な気持ちを吹っ飛ばそう。
  • かつおはトマトとあわせてうま味を8倍に。

フォークにたっぷりと旬を巻き付けて口の中にいれれば、梅雨も忘れて、おいしい時間を過ごせます。ご馳走さまでした。

「梅雨をのりきる初鰹とトマトのパスタ」レシピ

本日の材料 ふたり分 (調理時間:20分)

・パスタ………………200g
・かつお………………100g
・ミニトマト…………12個
・イタリアンパセリ…4枝
・にんにく……………1かけ
・塩……………………ひとつまみ
・粗びき黒こしょう…少々
・白ワイン……………大さじ2
・オリーブオイル……大さじ3

作り方

①かつおは包丁で叩いてミンチにする。ミニトマトは半分に切る。イタリアンパセリはみじん切りする。にんにくはつぶして、皮と芽をとる。
②フライパンにオリーブオイルとにんにくを入れ、弱火でキツネ色になるまで炒める。
③❷にかつおを加えて塩をふり、白っぽく色が変わるまで炒める。
④鍋に湯を沸かす。湯の1%ほどの塩(分量外)を入れ、パスタをゆでる。
⑤❸にミニトマトを加えて、潰しながら炒め流。白ワインを加える。イタリアンパセリ、黒こしょうをふる。
⑥袋の表示時間の1分前になったらパスタをザルにあげ、ゆで汁大さじ4とともに❺に加える。
⑥パスタにソースを吸わせながら1分ほど炒め、火からおろして、オリーブオイル小さじ2(分量外)を加えてあえ、器に盛り付ける。

料理製作・文・写真/山田英季 構成/松崎愛香