妊娠中や出産直後の情緒不安であるマタニティブルーは、多くが一過性のもので1〜2週間ほどで治おさまります。ですが気分の落ち込みが長期にわたって続く場合は「産後うつ」が疑われます。誰でもなる可能性があり、症状は深刻。今回は筆者がカウンセリングにあたり、日常生活を取り戻した女性の実録です。
「産後うつ」と診断された彼女との出会い
彼女は30歳になったばかりのママで、出産を機に会社を退職し、専業主婦として過ごしていた女性でした。 主治医から「産後うつ」と診断を受け、筆者のカウンセリングルームを訪れたのは、お子さんが8か月になったころでした。
初回のカウンセリングで彼女が語ったのは、以下のような内容です。
「これまで勉強も仕事も、努力や無理をすればなんとかなっていました。 ところが、子どもを産んでから『がんばればなんとかなる』という私の中の方程式が崩壊しました。 なにひとつ、自分の思い通りには進みません。 先日、予防接種の予約を忘れていて、病院から電話がかかってきたんです。それでなんだかどっと疲れてしまって。 涙が止まらず、子どももかわいいと思えず…もう辛いんです」
最後のほうは声が震えていて、彼女が限界を迎えていることが伝わってきました。 筆者はまず、彼女に「よくがんばられました。あなたはなにも悪くない」と伝えました。 すると彼女は大粒の涙をボロボロと流し、絞り出すような声で「私が悪いんです…」と言うのです。