林伸彦先生

もしお腹の子に病気や障がいが見つかったら、どうすればいいのか。 どんなサポートがあるのか知らない人がほとんどではないでしょうか。 実は、日本はあまり支援体制が整っていないと言われています。私たち子育て世代にとって、他人事ではありません。

 

そんな中、妊婦やその家族を支えようと活動しているのが、「NPO法人 親子の未来を支える会」。代表理事で産婦人科医の林伸彦さんに、なぜそうした支援活動を行っているのか、日本の課題は何なのか、お話を伺ってきました。

「生まれる前から」のサポートを 


まず、親子の未来を支える会がどのような活動をしているのか教えてください。

 

林先生

誰もが暮らしやすい未来をつくることを目指して、生まれつきの病気や障がいがある子どもと家族を、出産の前段階から支援する活動をしています。 病気や障がいが分かった時に相談できる場をインターネット上に設けているほか、胎児の医療面でのサポートなどを行っています。

 

生まれる前に病気や障がいがあると分かる、というのは、なにか特別な検査をした時ということでしょうか?

 

林先生

もちろん羊水検査やお母さんの血液で検査する新型出生前診断などで分かることもありますが、通常の妊婦健診で受ける超音波検査でも赤ちゃんの問題が見つかることがあります。

 

でもほとんどのお母さんたちは「病気が見つかるかもしれない」という心構えを持って普段の妊婦健診を受けていません。告知を受けたら驚きますし、どうすればいいか分からない方がほとんどです。しかし今、日本ではその後をフォローする体制がないんです。

  

フォロー体制がないということは、告知された後はどうなるのでしょうか?

 

林先生

告知の際、赤ちゃんはこの後どうなるのか、治療できるのか、出産をあきらめる場合はどうするのかなどの説明はされますが、その後は「〇日までに決めてください」と言われるだけで帰されることもあります。病院によって対応は異なりますが、基本的にその後は自分たちで情報を得て、考えるしかありません。

 

障がいというとダウン症などがイメージされることが多いですが、それ以外にもいろいろな病気や障がいがあり、日本では25人に1人の赤ちゃんが何らかのケアが必要な状態で生まれてくると言われているんです。

 

4%という数字は、想像していた以上に大きなものですね。いきなり病気があると分かっても、どうすればいいか分からずすごく混乱してしまうと思います。

 

林先生 

無事に生まれてくるのか、どんな子が生まれてくるのか、生活はどうなるのか、ライフプランはどうなるのか、多くの疑問が浮かんでくるはずです。でも、ショックを受けている中でそういう情報を得るのはとても難しいですよね。

 

パートナーや他の家族と意見が分かれてしまうこともありますし、混乱の中、病気や障がいについて正しい情報を得られないまま、出産をあきらめてしまう人もいます。

 

僕が一番避けてほしいのは、誤解したまま決断することや、後で後悔してしまうこと。週数によりますが、数日から数週間で今後について決断を下さなければいけないこともあります。

 

そのため告知をした後のサポート体制、生まれる前から家族を支える仕組みをしっかりとつくることが重要だと感じ、病気や障がいのある子どもたちを育てているお母さんなど当事者の方と一緒に会を設立しました。