息子は「10点のテストも隠さず見せてくる(笑)」
── 息子さんが問題を抱えたときには、親としてどう関わりますか。
東儀さん:問題が起こったときは「その前はどうしてた?」「その前は?」と、時間を一緒に巻き戻していきます。そうすると「そこだよ。その言葉は、こういうふうに勘違いされる可能性がある。だからこうなったんだね」とポイントが見つかる。「ああ、そうか」と本人が納得すれば、次から気をつけるようになるはずです。
「あなたが悪い」「向こうが悪い」だけでは、何の解決にもならない。一緒に原因を探していくことが大事なんです。親がいつでもなんでも話を聞いてくれるっていう状態があると、孤立しません。外でどんなに嫌なことがあっても家に帰りさえすれば絶対安心、と思うことができて、何があってもへこまないでいられます。なんでも話せる信頼関係があれば、隠しごとがなくなるのです。
息子は、学校のテストで100点満点中10点を取っても、隠さず「10点だったよ!」って目をキラキラさせて見せてきますから(笑)。そんなときも「そうか。運が悪かったな」「これは向いてないからしょうがないね。向いているものでいい点をとればいいんだよ」と笑い飛ばします。向いていないことで自己否定する必要はないんです。
── そんな息子さんも19歳。最近では一緒に音楽活動もなさっていますが、雅楽を継いでほしいという思いはあったのでしょうか。
東儀さん:全然ないです。息子が興味をもてないとか、向いていない可能性もあるのに、「東儀家だから雅楽をやりなさい」と言うことほど、つらい人生を与えることはないと思っていました。結果的に息子が雅楽に興味をもってくれ、今一緒に音楽活動をできていることはすごく嬉しい。人間自分が本当に向いていることにまっしぐらに生きて、「ああ楽しかった。人生最高だったな」と言って死んでいくのが最高だと思うから、息子にもそういう人生を歩んでほしいですね。
A、B、Cで迷ったら「全部やる方法を考える」
── 子どもが自分に向いているものを見つけるには、どうすればいいと思われますか。
東儀さん:「自分が何に向いているかわからない」という人は多いと思います。でも、待っていたって何も起こりません。だから、「どうせダメ」じゃなくて、前向きな「かもしれない」の可能性の扉をあけて、動きやすくしておく。たとえダメでも、やってみて「ダメだった」と知ることには、すごく価値があります。自分には向いていないと自分で判断できるのは、実際にやった人だけなんだから。
最初からやらないと、「あのときやっていれば」と後悔が残るものです。A、B、Cの3つの選択肢があるとき、どれかひとつに決める必要なんてない。迷うんだったら、まずA、B、Cを同時にできる方法を考えればいいと僕は思うんですよね。
── 全部やってしまう?
東儀さん:そう。人間はそんなに器用じゃないから、3つやっていたらどれかがおろそかになり、それが自然に淘汰されて、向いているものが残ります。最初にAと決めてしまったら、本当はCに向いていたかもしれないのに、その可能性を最初から閉じることになる。全部経験していれば、振り返って「本当にBでよかったのかな」と思ったとしても、「Aもやったけどダメだった。だからBでいいんだ」と自信を持てると思うんです。
とにかく思ったことは何でもやってみて、ダメだと思ったら、コロコロ翻ればいい。まっすぐ生きるのがカッコいいとは思いません。ジグザグであればあるほど道のりが増え、経験が増える。僕の人生も遠回りに見えるかもしれないけれど、結局どの経験も必要だった。遠回りの人生には、いいことしかないと思うんです。
取材・文:池守りぜね 写真:東儀秀樹