産休・育休中は「監督代行も実現」

── 第2子を望んでいることも事前にチームに伝えていたそうですね。産休・育休について契約に盛り込んだのは、当時のバレーボール界では珍しいことだったと伺いました。

 

竹下さん:年齢的なこともあって、第2子の妊娠を希望していることも事前に相談していました。一般企業では当たり前だと思いますが、監督業に産休・育休はなく、妊娠したら次の監督を探さなくてはならないので、以前は、契約解除というケースもあったようです。妊娠、出産で現場から離れなくてはならない期間があるので仕方がない部分はあるのですが、スポーツ界にも産休・育休のような制度があってもいいんじゃないかと思っていました。

 

発足したばかりで、「新しいことにどんどん挑戦していこう」というメンバーに支えられ、産休・育休について契約に盛り込んでいただけたのはありがたかったです。私が産前産後で休んでいる間は、コーチに監督代行を努めてもらっていました。

 

── 2018年に次男を出産後、8か月で現場に復帰しました。スポーツの指導者の立場の方はまだまだ女性が少ないそうですし、一般企業では育休取得率が8割を超えているものの、子育てしながら働く女性の葛藤は尽きないと言われています。竹下さん自身はどんなことに両立の難しさを感じていましたか。

 

竹下さん:チームによっても違いますし、今は女性で監督をされている方も増えているものの、お子さんがいる方は、ある程度子どもが大きくなってからか、未婚の方が多いように感じています。

 

私の場合は、ありがたいことにチームの手厚いサポートや理解があったものの、2人目が生まれてからは保育園の送迎も、家庭での家事や育児も結構ハードになっていきました。自分の時間はなかったですね。私自身は人に甘えるのがあまり得意ではないので、「どこまでお願いしていいんだろう」という迷いがあったように思います。大変なときに「手伝ってほしい」と素直に甘える勇気も必要だったのかなと思いますね。

 

女性は周りからどう思われるかを気にする方が多いですし、私も気持ちはすごくわかるものの、「ここは人に頼るべき」と割り切ってお願いしてもよかったかもしれないと思っています。余裕がある企業であれば、外部のシッターさんに依頼するのもひとつの手だと思います。

息子ふたりは小学生に「夫のように育ってほしい」

── 2020年のシーズン終了まで監督をつとめ、その後は家族4人で生活しています。監督時代は小さかったお子さんも現在は、小学5年生と3年生になったと伺いました。子育てと仕事を両立していたことが今、活きていることはありますか。

 

竹下さん:限られた時間のなかで、自分時間、子ども時間、家族時間と切り替えて、時間の使い方が上手になったことです。息子はふたりとも野球をしていて、送迎や当番などの役割もあり、日々のタスクは増えていっています。

 

── 時間の使い方のなかに「夫婦時間」がなかったのですが、旦那さんとの時間はありますか?

 

竹下さん:夫は阪神タイガースのコーチを務めていて、ちょうど今、シーズン中なので夫婦で過ごすということはほとんどありません。でも、家から駅まで夫を送る際の車内の会話が夫婦時間になっていると思います。

 

話の内容は学校のことや、息子の野球のことで、やはりメインは子どもの話になりますが、夫婦間の会話は大事ですね。リビングに家族がいることが多く、もともと会話が多い家だと思いますが、夫婦でもコミュニケーションを取ることは欠かさないようにしています。

 

── 息子さんはふたりとも野球をしているとのことで、旦那さんはさぞかし喜んでいらっしゃるのではないでしょうか。

 

竹下さん:夫も私も、何かスポーツはしてほしいとは思っていたものの、自分の競技をしてほしいとはまったく思っていないんです。息子たちは自分の希望で野球を始めました。夫は「親と同じスポーツをすると、あとあと息子たちが何か言われるかもしれないけど、それを気にしないでできるならいいんじゃない?」というくらいですね。

 

野球を通じてできた友達同士で仲良くしているのを見ると幸せですし、そこはやらせてよかったなと思います。ただ、私はバレーボールしかしてこなかったので、初めて屋外の競技に携わってみて、「なんだこの大変さは!」というのが正直なところです(笑)。バレーボールは体育館でするので、天候で中止になることはあまりないのですが、野球は天候にも左右されますし、天気がよければ1日中炎天下で…。ユニフォームが土で汚れるという経験も初めてです。洗剤もそうですし、熱中症予防グッズやクーラーボックスなど、いろんなアイテムが着々と増えていっています(笑)。

 

── 大変さは増えているものの、息子さんたちの将来が楽しみですね。どのように育ってほしいと思っていますか。

 

竹下さん:決してのろけるつもりはないのですが、私は息子たちが「夫のように育ってほしい」と思っているんです。夫は敵を作らないタイプで、息子たちも、夫のように誰からも愛される人になってほしいなと。親ができることは整えてあげて、あとは彼らがどんな道を歩むのか、見守っていけたらと思っています。

 

取材・文:内橋明日香 写真:竹下佳江