「仏壇じゃない」夫婦で娘のおうちを作った

── 出口のない自責のなかで、何が梓さんの支えになっていったのでしょうか。
田中さん:夫が私と同じようにまおちゃんを思い、ずっと味方でいてくれたことは、本当に大きかったです。夫婦の間で受け止め方に温度差がなかったことで、「このつらさを自分ひとりで抱えているわけじゃない」と思えた。そのことが、何よりの救いでした。
そして次第に、「まおちゃんのために何かしてあげたい」「これからもずっと一緒にいたい」という思いが強くなっていきました。お骨もずっと手元に置いておきたかった。ただ、一般的なお仏壇には、亡くなった人を祀るための形式的な場所というイメージがあって、私たちが求めていたものとは少し違ったんです。
私たちが欲しかったのは、まおちゃんを遠くに祀るための場所ではなく、これからも同じ空間で一緒に毎日を過ごせるような場所でした。夫に相談すると、「じゃあ、自分たちで作ってみようか」と言ってくれて。ふたりでデザインを考え、ホームセンターで木材を買って手作りしたのが、まおちゃんの小さな「おうち」でした。
「亡くなった人」として遠くに置くのではなく、今もこの家の中に一緒にいる存在として感じていたい。そんな私たちには「仏壇」よりも「おうち」という言葉のほうがしっくりきました。まおちゃんの居場所となる「おうち」ができてからは、何気ない夫婦の会話の中にも自然とまおちゃんの名前が出るようになって、日々の暮らしの中で娘の存在を感じながら過ごせるようになりました。
── まおちゃんを見送ってから今年で6年がたちました。時間が経てば、悲しみは少しずつ薄れていくものなのでしょうか。
田中さん:「悲しみが癒える」ということは、これからもずっとないのかなと思っています。今でもこうしてまおちゃんのことをお話しすると、すぐに涙が出るほどです。でも、悲しみと向き合い続けてきたからこそ、これは消えるものじゃないとわかりました。ムリに消そうとするんじゃなくて、この悲しみを抱えたまま、まおちゃんと一緒に生きていけばいいんだと思えるようになったんです。
取材・文:西尾英子 写真:田中梓