これからは「できないこと」に価値がある時代になる

── 吉藤さんはOriHimeだけでなく、身体表現を支援する技術の開発にも取り組まれていますね。
吉藤さん:私たちが作りたいのは、人の代わりに働くロボットではなく、人との関係を生み出すテクノロジーです。
そのひとつが、脳波で動かす「ウェアラブルロボット」です。これを装着すれば、体が動かせない人が自分の意思で身体表現をできるようになります。
今年6月に開催されたイベントで、友人である武藤将胤がウェアラブルロボットを装着して、DJパフォーマンスを披露しました。彼はALS(筋萎縮性側索硬化症)で体を動かすことができませんが、視線入力でコンピュータを操作し、DJとして活動しています。
これまでは、車椅子に座って視線入力をしていると、観客席からは何をしているかが伝わりにくかった。今回のイベントでは、ロボットアームを動かして、手を上げたり手を振ったりしてパフォーマンスをしました。そうしたら、会場の盛り上がりが全然違ったのです。
── これから、ロボットはどのように進化するのでしょうか。
吉藤さん:テクノロジーはどんどん進化しているので、ロボットは今よりもっといろいろなことができるようになると思います。将来は、自分の介護はロボットを使って自分でできるようになる時代になるかもしれません。そうなったときに必要なのは、「じゃあ、何ができなくて困っているのか」「何をしたいのか」という当事者のニーズです。
それは、病気や障がいがある人や、高齢で体が動かなくなった当事者にしかわかりません。だから私は、これからは「できないこと」に価値がある時代になると思っています。体が思うように動かない、精神的な理由で家から出られない、そういう人が孤独にならないためのテクノロジーを、これからも作っていきたいと思います。
取材・文:林優子 写真:オリィ研究所