「気をつけて」には加害者にならない意味が
── 事故を経験し、「自分が加害者になる恐ろしさ」を知ったことで、お子さんにかける、「気をつけて」の言葉の意味も変わったそうですね。
大東さん:私は、息子が自転車に乗るとき、「車に気をつけて」という言い方はしません。それだけだと自分が被害に遭わないための注意で終わってしまうからです。そうではなく、「自転車でお年寄りにぶつかって転ばせたら、あなたが命を奪う加害者になるんだよ」と、加害のリスクを徹底して伝えてきました。
自転車だって使い方ひとつで、簡単に凶器になります。たとえば、細い道で歩行者も混雑している場所では、ベルを鳴らしてよけてもらうのではなく、必ず運転する自転車から降りて押して前を通る。急いでいるときほど心に余裕がなくなり、判断が荒くなるので注意が必要です。私自身も電動自転車に乗りますが、つねにいちばん弱いアシストの「1」しか使わないようにして、速度も上げすぎないよう心がけています。
──「交通事故に気をつけて」という言葉は、「加害者にも被害者にもならないで」ということなのですね。
大東さん:交通事故は、起こそうと思って起こるものではありません。でも一歩外に出れば、すれ違う一人ひとりに生活があって、待っている家族がいる。私は被害者になったことで、加害者になることの重さも知りました。車でも自転車でも、判断ひとつで誰かの人生を変えてしまう。その前提を忘れずに行動することが大切だと思います。
取材・文:西尾英子 写真:大東めぐみ