杖での生活「日常の大変さ」を知った
── 歩ける状態に戻るまでに、2年ほどかかったそうですね。
大東さん:最初の1年くらいは、足に装具をつけ、杖をついて生活していました。当時まだ小さかった長男の送り迎えもその状態で行っていたんです。 ただ、いざ杖をついて外に出てみると、電車に乗ったり人混みを移動したりするのが本当に怖くて。
後ろから押されたら危ないし、周りの人はスマホを見ている方が多くて、私が杖をついていることに気づいてくれるとは限らない。自分がそういう立場になって初めて、体が不自由な人や高齢の方が、日常の中でどれだけ気を張っているのか実感しました。事故から長い年月が経った今も、体への影響は残っています。左膝は前十字靱帯が外れたままで、痛みが出ると日常生活にも支障があります。いずれ手術を受ける予定です。

── 一瞬の事故が、健康な体だけでなく、当たり前の日常を奪っていく。他人ごとではありませんね。
大東さん:「朝『行ってきます』と元気に出た人が帰ってこない」。誰もそんな未来、想像しませんよね?でも、それが一瞬で起こってしまうのが交通事故なんです。私もはねられた日の朝、NHKのロケに行く前に、子どもに「夕飯、何食べたい?」と聞いて家を出ているんです。帰りに買い物をして帰ろうと思っていたのに、そこからすべてが一変してしまいました。
積み上げてきた仕事も思い描いていた未来も、一瞬でゼロになる。交通事故に遭ってよかったことなんて何ひとつありません。だからこそ、事故をどこか遠い話だと思わずにいてほしいんです。いつもの道を歩くとき、仕事に向かうとき。その当たり前の日常が、次の瞬間にも同じように続くとは限らない。それを身をもって知りました。
取材・文:西尾英子 写真:大東めぐみ