月の依頼は8件「需要はあるのか」と自問し

── 滑り出しは順調でしたか?

 

石黒さん:いえ、預かり施設は利用者がまったく集まらなくて。立地の悪いところだったので、子ども連れのお母さんたちにはアクセスしづらかったのかなと反省しています。行政の補助もなかったため、資金面で持続が難しく、残念ながら10か月ほどで閉めることになりました。かけつけサービスも厳しい立ち上がりで。ベビーシッターの「頼ってさん」17人に対し、月に8件しか依頼がありませんでした。当時は「このサービスは本当に需要があるんだろうか」と自問を繰り返していましたね。

 

── わずか8件ですか。利用者の少なさをどのように改善していったのでしょう。

 

石黒さん:毎日運営メンバーと話し合いを重ねつつ、12万人にアンケートをとって問題点を探っていきました。

 

そのおかげで、問題があるのは料金面と登録システムの煩雑さだとわかり、1時間の利用料金を2700円から1980円へ、登録をLINEでできるよう簡略化しました。その後、予約数が少しずつ増えていき、エリアも拡大。現在では月200件ほどの依頼が来るようになりました。「頼ってさん」との連携もLINEを使うことでスムーズになり、より迅速に依頼できるようになりました。

 

── 現在、「頼ってさん」は700名いらっしゃるそうですね。どんな方々ですか?

 

石黒さん:保育士や助産師、看護師といった国家資格をお持ちの方、それから専門家監修の育児119独自の認定資格を持った方がいらっしゃいます。

 

「頼ってさん」たちは、自分の子育てが少し落ち着いたお母さんはもちろん、実は子育てまっただなかのお母さんも多いんです。「育児をしていたときに自分が誰かを頼れずにつらい経験をしたから、今その状況にいるお母さんを自分が助けたい」という思いの方もいれば、「つらかったときに周りの人が助けてくれて育児ができたから、次は自分が助ける番に回りたい」と言ってくださる方もいます。みなさんそれぞれの育児のなかで経験してきた思いが現場でも活かされ、思いやりが循環しているように感じます。

 

── どんな内容の依頼が来ますか?

 

石黒さん:100人のお母さんがいたら100通りのケースがあります。体調不良だから別の部屋で休みたいという方、育児で追い詰められ、とにかく誰かに来てほしいと泣きながら電話をくださる方もいらっしゃいます。

 

ただ、「119」という名前ではありますが、緊急時だけでなく、保護者の方のリフレッシュ目的でも利用いただいています。最近では「子どもの写真はたくさんあるけれど、ママと子ども一緒の写真はなかなか撮れないから、日常の写真を撮ってほしい」というケースもありました。家事代行と病児保育は対応していませんが、それ以外のご希望には臨機応変に応えています。