「娘が口に入れても、安全なものを」。青森でシングルマザーとして奮闘していた木村尚子さん。デザイナーとして「小1の壁」にぶつかり、会社員を辞めて踏み出した一歩が、廃棄野菜を色に変える「おやさいクレヨン」の誕生でした。コネも資金もないなか、1軒の工房にかけた電話から始まった挑戦。日本中の企業が注目する今も変わらない、ひとりの母親としての切実な着眼点とは。

キッチンにあった、野菜の切れ端に目が留まった

木村尚子
ラジオに出演中の木村さん

──「ガイアの夜明け」などTV番組にたびたび取り上げられ、2022年度には日本政府から科学技術分野の文部科学大臣表彰・科学技術賞を受賞している「おやさいクレヨン」。廃棄される野菜等を再利用し、「にんじん」「ほうれんそう」と野菜の名前が色になった安心、安全なクレヨンは、企業からのコラボオファー依頼も多いそうですね。

 

木村さん:ありがとうございます。廃棄野菜等をパウダー加工し、同じく廃棄される米ぬかから抽出したライスワックスや米油で固めたのが「おやさいクレヨン」です。企業や自治体のサステナブル意識の高まりにより、OEM(委託製造)の依頼も増えています。たとえば食品ロスの削減と食育を目的とした飲食店のキャンペーン用におやさいクレヨンが使われたり、抽出後のコーヒーかすを使った珈琲クレヨンを開発したりしました。

 

── 木村さんはデザイナーとして働くなか、33歳のときに「おやさいクレヨン」の会社を立ち上げられました。野菜でクレヨンを作る…何がきっかけだったのでしょうか?

 

木村さん:学生の頃から「ものづくり」がしたくて、ハンドメイドでも何でもいいから形あるプロダクト(製品)をつくろうと思っていました。大学卒業後は情報誌の制作プロダクションに会社員として勤務。24歳で娘を授かりましたが、早々にシングルになりました。残業が多い業界だったので「小1の壁」にぶつかって。会社員を辞めフリーのデザイナーになったころから、ものづくりへの気持ちが再燃しました。いまから14年前、2012年の冬のことでした。

 

── 起業したいというより、何かを作りたい気持ちが先だったと。

 

木村さん:はい。「親子で使えるものを」と考えていた矢先、私の地元・青森県産の藍を使った藍染展示会に行き、天然の藍色の美しさに衝撃を受けました。「私も地元の産物で…」とアイデアを練っているなかで、キッチンにあった野菜の切れ端が目に留まって。これで藍染と同じように、色を表現するものが作れないかと思ったんです。