いじめられた相手から「サインがほしい」と

── その原因となったかつての同級生たちと、大人になって再会されたそうですね。どんな言葉を交わしたのでしょう。

 

大林さん:21歳でオリンピックに出たとき、私をいじめていた男子たちが練習を見学に来て「サインが欲しい」と言ってきました。後日、「あのときは本当に嫌だったんだよ」と伝えたんです。でも、彼らは「え、いじめてなんかないよ」と。忘れているのか、自覚のない「いじり」だったのか。

 

悪意があろうがなかろうが投げつけられた言葉の暴力は、受けた側に一生、心の傷として残ります。謝られたからといって納得できるわけではないし、私の記憶は変わりません。その後、改めて話し合い、和解して、当時できたばかりのファンクラブの会員になってもらい(笑)、それからは応援団として見守ってくれました。

 

── 決して消えない記憶やコンプレックスと、どう折り合いをつけてこられたのでしょう。

 

大林さん:あの過去がなければ、私はバレーボールに出合うことも、あそこまで自分を追い込んで頑張ることもありませんでした。コンプレックスには、努力で直せるものと、身長のように自分の力ではどうにもならないものがあります。変えられるものなら努力すればいいし、もし隠してやり過ごせるのなら、それもひとつの生き方だと思います。

 

ただ、どうしても変えられないのなら、現状を受け入れて、あえて自分の「売り」として表に出してみる。そうすることで、コンプレックスは他人が持っていない強力な武器に変わるんです。少なくとも私は、そうやって弱みを強みに転換することで自分なりの戦い方を見つけ、生き抜いてきました。

 

今、自分の力では変えられない悩みに直面し、いじめに苦しんでいる方もいるでしょう。すぐに状況は変わらなくても、いつかまったく違う価値観や、新しい世界に出会うチャンスが必ず訪れます。その悔しさやつらさをパワーに変えられる日がやってくるからと、私は信じています。

 

取材・文:西尾英子 写真:大林素子