就職先での気づき「縛られていたのは私だった」

── 就職の際にも、壁を感じたことはありましたか?
伊藤さん:就職活動中、「うちでは片腕の看護師は受け入れられない」と、断られることは珍しくありませんでした。直接言われるとやはりショックでしたし、「看護師として働くことは無理なのかな」と不安に駆られました。
それでも、義手であることを隠さずに左手で書いた履歴書を携えて、就職活動を続けました。すると「うちで働きませんか」と言ってくれる病院がいくつか見つかって…。事故で片腕をなくしてから約3年後。神戸の病院で、看護師として働けることになったんです。
── 勤務後は、「ひとりではできないこと」をどのようにカバーしていったのですか?
伊藤さん:「ひとりでできるようにならなければ」という意識を、まず手放しました。最初は、「周りと同じようにできるようにならなければいけない」と思って、頑張りすぎてしまったことがあったんです。でも、どんなに努力しても、行き着く先は「私ができることには限界がある」という事実。そのうちに、「ひとりで全部やろうとしなくてもいいんじゃないか」と考えられるようになりました。
できることをしっかりやる。でも、どうしても難しいことは、周りの人にお願いする。そうやって役割を分けて考えるようになってから、少しずつ働きやすくなった気がします。幸い、「手伝ってほしい」という私の申し出を同僚は快く引き受けてくれました。
「ひとりでやらなきゃダメだ」。その考えに縛られていたのは、私だけだったと気づいたんです。