注文から2分。1杯290円でも「利益が出る」異常な仕組み
──「原価が上がったから値上げする」というのは今や当たり前の風潮ですが、それは「努力不足であり、甘えである」ということですね。問題は値上げせずに、いかにして利益を出すか。ラーメン一杯290円を50年間維持できるのは、利益が出ているからに他なりません。その方法は?
澄川さん:ひと言でいえば、緻密な計算と創意工夫によるものです。メニュー、調理の作業工程、オペレーションや店舗のレイアウトなどを考え抜き、超効率的な仕組みづくりを徹底して、「安い、早い、うまい」を実現しています。といっても、奇をてらった手法はひとつもありません。小さな工夫やルールの積み重ねにより生産性を最大化し、必然的に一杯290円でも利益を出せるようになっているのです。
たとえば、うちのお店ではラーメンをはじめとしたメニューの数を絞っています。絞り込むことで扱う食材が限られてロスがなくなり、つねに新鮮なものを提供できる。また、調理作業も限られて繰り返しが多くなるため、従業員の熟練度は上がる。結果として原価を減らしながら美味しさを生み、回転率は上がるので、自然と売上が上がっていくんです。そのほか、作業工程の単純化や少ない人員での店舗運営、動線の短いコの字型カウンターを採用するなど、原価を圧縮して生産性を最大化させる取り組みがたくさんあります。

── そのような知恵を絞らない飲食店が多い。
澄川さん:そうです。物価高の苦境を乗り切るのに、売価を上げたり、メニュ―を増やしたりする程度しか考えない。でも、そうしたらもっと売れなくなって食材のロスは多くなります。原価がさらに上がっていくのです。
──「はかたや」の構造とは真逆。
澄川さん:「はかたや」では1日平均800杯、24時間営業の店舗では時に1400杯ほどのラーメンが売れていきます。お客さんのテーブルにラーメンが置かれるのは注文からおよそ2分以内。ピークタイムには1時間に70〜80名程度のお客さんがやってきて、26席のお客が3回転することも珍しくありません。効率化とともに追求した飽きのこない味を求め、地元のみなさんが足しげく通ってくれるので、一杯290円でも利益が出るわけです。一杯の利益率は低くても回転数を上げることで他のチェーンより月の純利益は高くなります。
加えて、周辺のラーメン店が値上げを行えば、新たにうちのお客さんになってくれる。いつの間にかライバル不在のひとり勝ち状態ですよ。