「こんな時に死にやがって」──壮絶な嫌がらせを救った、亡き父の言葉
スクール卒業後、就職先を探すも都内のサロン50軒から断られ続けた塩見さん。「面白そうだから」と唯一、話を聞いてくれたネイルサロンで働き始めますが、待っていたのは逆風でした。お客さんから『触らないで』と拒絶されることもあり、職場の人間関係も次第に悪化していったそうです。
「当時はお客さんもスタッフも100%女性の世界。ネイルをする前から『他のサロンで男性のネイリストが担当だったときに下手だったから』という理由で門前払いをする方もいましたが、それでも半分ほどのお客さんは技術、接客面を含め僕を受け入れてくれました。ただ、女性の職場で見た目が中性的ではないからですかね。そういう所を含め気に食わなかったのかもしれませんが、お客様が僕を気に入っていることが、スタッフからよく思われていないのは感じていました」

転機は、父の死と娘の出産が重なった時期でした。
繁忙期の12月に父の葬儀と出産が重なり数日休むと、職場の方から「こんな時に死にやがって」と吐き捨てられました。もはや男性、女性という次元ではなく、倫理観がズレてますよね。ここに居場所はないと、辞める決心をしました。
父は生前、スクールに通う前こそ厳しい言葉をかけましたが、最期は「面白いところに目をつけたね」と独立に向けたアドバイスを遺してくれたそう。その言葉が、後の塩見さんの支えになります。しかし、その後のサロンでも嫌がらせがあり、道具を隠されたり、わざと聞こえる声で「あいつまだいんの」と陰口を叩かれたりした日も。しかし塩見さんは、怒るどころか「仕方ない」と受け流していました。
「女性社会に男性が入るという、もともと居場所がないところで働かせてもらっているという意識が強かったんです。居場所がないのは当たり前。何より、僕に指名客がつくのが面白くなかったんでしょうね。僕は店で一番指名が多く、一日中働いていましたから。オーナーに告げ口?言ったところで変わらないでしょう。逆に『あの子はよくやってますよ』と嫌がらせをした人をわざと褒めていました(笑)」