「無事に産めなくてごめん」。自責の夜を越えた母・永島祥子さんが手にしたのは、ミシンでした。重度脳性まひと診断され、体が棒のように突っ張る息子のため寝る間を惜しんで作り続けたリハビリグッズ。専門家の「頑張りすぎ」という声をよそに、気づけば全国へ届けた数は1000個以上にのぼります。「嶺(れい)がいなければ、この世界の課題に気づけなかった」。絶望を誰かのための「希望」へと変えた母と息子の、12年にわたる記録です。

「あったらいいな」を形にした、母の執念

── 2013年、重度の脳性まひで生まれた長男・嶺くん。体がカチカチにこわばる息子のため、永島さんが始めたのは「リハビリグッズの自作」でした。今や全国から注文が殺到するその活動は、あまりに切実な動機から始まっていました。

 

永島さん:嶺はまひが強く、1歳になっても首がすわりませんでした。リハビリ施設ではバスタオルを丸めて体を固定していましたが、「これなら家でもできる仕組みを作れるはず」と思ったのがきっかけです。最初は販売なんて考えてもいませんでした。でも、リハビリ施設で使っていると、他のママたちから「うちの子にも作ってほしい」と次々に声をかけられたんです。

 

永島祥子
不安は多いが、嶺くんの成長は喜びでもある

── 2015年からSNSで発信を始めると、口コミで評判が広がり、グッズは累計1000個以上製作。それまで見落としてきた小さな不便を、ひとりの母が形に変えてきます。

 

永島さん:定番の「ぺこーなリング」は、腕を通すだけでうつぶせ姿勢をサポートするクッションです。市販品はサイズが合わないケースが多く、装具は高価。ならば、私がオーダーメイドで作るしかないと思いました。

 

商品作りでは「洗濯機で洗える」「簡単に装着できる」といった、使いやすさを一番に考えています。障がいのある子のお世話は、とても大変です。自分で体を動かせない子には、数時間おきに体位変換をしなくてはいけません。食事も食べやすく刻むなどの配慮が必要です。介護者はいくら時間があってもたりないほど、忙しい毎日なんです。