返事のない3年間。それでも手紙を書き続けた理由
── 栄養への意識がまだ低い、いわば逆風のような環境のなかで、どのように関係を築いていったのですか。
大前さん:プロ野球がオフシーズンのときに、手紙を出したんです 。「エネルギー補給で球速を維持する確率が上がる」「ケガの防止や筋力アップにつながる」など、栄養学が結果にどう結びつくかを具体的に書いて、「栄養でできることはたくさんあります」と伝えました。ただ、そこから2年間にわたって手紙を出したのですが、まったく無反応だったんです。
── 2年間も無反応。ふつうならあきらめてしまいそうですが。
大前さん:栄養をコンディショニングに取り入れることのメリットに気づきさえすれば、絶対に必要としてくれる。その確信がありました。それに、紹介してくださった前述の投手コーチに「やります」と言った以上、その約束を途中で投げ出したくない思いもありました。
転機が訪れたのは、3年目です。上原選手のケガが重なり、思うような成績が出ずに苦しんでいた時期でした。「食を変えることで、ケガを防げたり、少しでもいい投球ができたりする確率が上がるなら話を聞きたいです」と、連絡をいただいたんです。ちょうど彼が選手寮を出て自炊を始めるタイミングとも重なり、ようやく本格的なサポートが始まりました。
上原さんは非常に頭の回転が速く、食生活において伝えたことをすぐに理解し、実践していく姿勢をもった素晴らしい方でした。結局、引退されるまで20年以上、コンディション作りに伴走させていただくことになりました。球界が全体的に、栄養に対する意識や姿勢が変わっていったことも実感しました。