伊豆旅行中にスマホが鳴り止まない「1枚の投稿」が変えた運命

── 使ってみれば汚れがよく落ちるとわかるかもしれませんが、ECサイトで初めて買う方には、価格(取材時:1箱1kg入り5,350円)も含めてハードルが高そうです。

 

平島さん:その通りです。気になる汚れものだけをつけ置きする洗剤なので、毎日使うわけではないのですが、洗濯洗剤としては高く感じますよね。でも宣伝費にお金を回す余裕はない。そこで、インフルエンサーの方に、使ってみて良かったらSNSで投稿してもらえると嬉しいですと、商品を差し上げることに。いまでこそ当たり前の宣伝手法ですが、当時はかなり珍しかったんです。

 

── 転機は2019年9月。突然訪れたそうですね。

 

平島さん:忘れもしません。交通費も払えない情けない状況で、両親に連れて行ってもらった家族旅行中でした。そしたらスマホの通知が止まらなくなって。どんどん注文が増えていきました。たどってみたら、あるインフルエンサーさんが「ソファカバーをつけ置きしてみた」という投稿をしてくれて、それが爆発的にバズっていたんです。

 

── 執念が実った瞬間ですね。

 

平島さん:翌日も注文が増え続け、「すぐに帰って発送作業をしないとまずい!」と旅行を切り上げて帰宅しました。「布おむつの汚れを落とす毎日に疲れた」というメールをいただいてからすでに5年。洗剤を一箱ずつ梱包しながら、執念をもって洗剤の開発に取り組んだ結果が、これだけの人に届いたんだ、と思うと感慨深かったです。「Rinenna(リネンナ)」を使ったら、うんち汚れが落ちた。加齢臭が消えた。子どもの服がよみがえった。洗濯が楽しくなった。徐々にそうした声が届き始めるようになり、誰かの役に立てている実感を持てるようになりました。

 

 

「手間をかけること」が愛情の証。そんな育児の呪縛に、平島さんは「汚れを落とすのは科学。もみ洗いは仕組みで手放せる」と、身をもって証明しました。ママ友から「やばい」と言われ、全国の営業所を泥臭く回って届けたのは、単なる洗剤ではなく「母親の貴重な時間を守る」という彼女の執念です。あなたは、本当は手放してもいいはずの苦労を、ひとりで背負い込みすぎてはいませんか。


取材・文:富田夏子 写真:平島利恵