「5億円」という数字が、父を突き動かした

谷岡哲次
待望の女の子誕生を家族で喜んだ

── 2歳で九州の専門医を訪ね、「レット症候群」と確定診断を受けます。

 

谷岡さん:絶望よりも「これでようやく病気に向き合える」という感覚でした。先生からレット症候群の研究はまだ基礎段階で、膨大な研究費がかかること、アメリカでは患者団体が5億円もの研究費を個人寄付で集め、研究を支援していることを聞いたんです。「祈っても治らないが、5億集めれば研究は進む」。そのあまりに明確な回答が、僕を突き動かしました。

 

── その帰り道の新幹線で、NPO設立を決めたのですね。

 

谷岡さん:はい。「準備が整ってから」なんて言っていたら、娘の時間は終わってしまう。生物学の基礎知識や知見のリスクを知る必要もありましたが、見切り発車でも研究者を支援する患者団体を作りたかった。翌日には行政書士に連絡して「NPO法人レット症候群支援機構」を立ち上げる手続きを始めました。妻には事後報告に近い形でしたが、彼女は戸惑っていましたね。