愛娘が、治療法のない難病「レット症候群」だと告げられたあの日。お祓いや民間療法にすがらざるを得ないほど、逃げ場のない絶望の淵にいた父・谷岡哲次さん。辿り着いたのは、ただ祈ることではなく「研究費の5億円を集める」というあまりに大きな決断でした。想像を超えた親の愛が、ひとりの父親を、そして家族を、途方もない挑戦へと駆り立てました。
「お祓い」にまですがった、逃げ場のない絶望

── 娘の紗帆さんに異変を感じたのは、生後半年を過ぎたころだったそうですね。
谷岡さん:ハイハイで呼んでも来なくなり、おすわりをしても転がってしまう。手を口に入れる動作や歯ぎしりも気になりました。1歳半健診ではできないことばかりで、病院へ行っても「小脳の働きが悪いのかも」と濁されるだけ。「リハビリをすればよくなるかもしれない」と一生懸命、訓練しましたが、変わらないばかりか、いろいろなことが徐々にできなくなっていきました。
── 「レット症候群」と診断がつくまでの2年間、あらゆる治療を試されたそうですね。
谷岡さん:ネットで「手を口に入れる」「歯ぎしりをする」と気になる症状を必死に検索しました。レット症候群の子を持つお母さんのブログを見つけたときは、まったく同じ症状で「紗帆もそうじゃないかな」と頭をよぎりました。でも通っていた大学病院で「断定するのはまだ早い」と言われて。そこからリハビリ、民間療法、東洋医学…藁をもすがる思いでお祓いにも行きましたし、針治療のために夫婦交代で毎週東京まで通いました。でも、何をしても娘の症状は変わりませんでした。このころは、「レット症候群なのかもしれない」と思いながら、答えがわからない不安を抱えていましたね。