「流される人生」を終え、初めて自分で開いた道
── 現在は地元・富良野で「和牛焼肉 にくだらけ富良野」のオーナーも務めています。そもそも、焼肉店を始めようと思ったのはなぜですか?
林さん:親への恩返しのために地元で働きたいとずっと考えていたんです。飲食、それも焼肉を選んだのは、ただただ「焼肉が好き」だから(笑)。でも真面目な話をすれば、富良野には地元の素晴らしい食材をメインにした焼肉屋さんが見当たらないなと気づいて。「じゃあ私が作ればいいんだ!」と思ったんです。
和牛にこだわり、提供するのは富良野を中心とした北海道のお肉。野菜やジェラートも富良野の食材を揃えています。せっかく富良野まで足を運んでくださるなら、「ここでしか味わえないものを」というお客さんの想いに応えたかったんです。

── 地元愛に溢れていますね。食材の仕入れ契約などもすべてご自身で行っているのでしょうか?
林さん:はい。父が飲食業に携わっていたので、業者を紹介してもらうなどアドバイスを受けつつ、自分で頑張りました。また、東京にある焼肉店「にくだらけ」を運営されている株式会社Nogleの皆さまにもサポートしていただいて、満足いく食材を揃えることができました。
── 林さんは芸能界デビュー後もIT企業のOLを6年間両立されていました。その経験も活かされていそうですね。
林さん:本当にそう思います。会社に入ったときはビジネスマナーなんて何もわからず、働きながら言葉遣いやメールの対応などもすべて学んだので、OLを経験していてよかったです。
──「何事もやってみる」精神が活きていますね。仕入れ以外にはどのような業務を?
林さん:バイトの面接以外、ほぼすべて関わっています。月に1度、1週間ほど富良野に帰り、毎日ホールに出て接客をして、お肉を焼いています。
今はスキーシーズンなので、おかげさまで賑わっています。外国から来てくれる方も多いので、英語はまったく喋れないんですけど、ジェスチャーとフィーリングで頑張っています(笑)。まずは今の店舗の地盤を固めて、長くいろんな人から愛してもらえるお店にしたいです。
もちろん、ふと「仕事だけで人生終わっていいの?」と自分に問いかけることがあります。でも、憧れていた保育士をあきらめてIT企業に就職したり、DMでスカウトされて副業気分で芸能活動を始めたりと、流されるままレールに乗ってきた人生を終え、30歳でやっと自分で見つけ、開いた道。だからこそ、簡単に手放したくはありません。世間がいう「幸せ」に縛られず、私は私の幸せを追求したい。今は仕事に邁進して、後悔のない人生を送りたいと思っています。
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「結婚して、母になること」だけが、唯一の正解ではなくなった時代。それでも、周囲のライフステージが変わるなかで、自分だけの道を進むには勇気がいります。林ゆめさんが選んだのは、誰かが敷いたレールの上を歩くことではなく、煙に巻かれながら自分の手でお肉を焼き、手応えのある「自分の人生」を自分で作ることでした。
誰かの物差しに自分を当てはめる必要はありません。人生のどの地点にいても、納得できる道を選び直すのに遅すぎることはないはず。あなたが今、自分の本音で大切に育てていきたいものは何ですか?
取材・文:髙木章圭 写真:林 ゆめ