「ガチ勢」から「エンジョイ勢」へ。感謝という調味料
── 食べることに対して、本当に真摯に向き合われているのですね。
アンジェラ佐藤さん:大食いには2つの見せ方があります。代表的なのが「大食い選手権」のように勢いよく食べる「ガチ勢」。必死に食べる姿を観ている方々に「頑張れ!」と応援していただく。それが、私たちなりの食へのひとつの恩返しだと思っています。
昔は私もスピードを競うことに力を注いでいましたが、最近はスタイルが変わってきました。大食い界の仲間でいうと、ロシアン佐藤さん、もえのあずきちゃん、ますぶちさちよちゃん、三宅智子さんたちもそうなんですが、「楽しい、幸せ、おいしい」を大切にするように。こうしたタイプは、大食い世界では、「エンジョイ勢」って呼ばれています。
たとえば、目の前におにぎりがあるとします。すると、「作ってくれた人は朝5時くらいに起きて握ってくれたのかな」と想像するんです。「ありがとうございます」というお礼の気持ちを込めて、食べることを楽しむようになりました。

── 感謝を忘れない気持ちは、誰もがもつべき大切なものだと思います。最近は台湾でも活躍の場を広げられていますね。
アンジェラ佐藤さん:はい。台湾の挨拶に「ご飯食べた?(食飽未?)」という意味も含んだ言葉がありますが、相手の健康を気遣うその温かさが大好きなんです。台湾の人々の食を大切にする考え方や感謝の深さは本当に学ぶことが多く、現地に行くといつも原点に立ち返れる気がします。
身体が健康で、今日もご飯が食べられる。その当たり前の行為に感謝することが、私にとって何よりの「おいしい」であり、究極のSDGsだと思っています。幼いころの「食べ物を無駄にしたくない」という思いを忘れず、自分にできることは何なのか、考え続けたいです。
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「残しちゃダメ」という執念が今の彼女を作ったけれど、50歳になった今は、無理に詰め込むことより「作ってくれた人の顔」を思い浮かべる時間を大切にしている──それって、私たちが忘れかけているいちばん贅沢なスパイスかもしれません。毎日忙しくて、つい「ただの栄養補給」や「義務」みたいになっている今の食卓。あなたは最近、食事を終えて心から「あぁ、おいしかった!」って笑えたのはいつですか?
取材・文:高梨真紀 写真:アンジェラ佐藤