「こうあるべき」を手放して見えてきた幸せの形

幼少期はこだわりが強く、希望が通らないとパニックになることもあった

── 現在、光汰朗さんとの日常で、意識していることはありますか?

 

立石さん:今、光汰朗は25歳になり、会社勤めをしています。今の生活で意識していることは、「息子の世界を否定しない」こと。光汰朗は時折、「このマンションでいちばんゴミが多い部屋はどこ?」とか「次の宅配便は、前と同じ人が配達してくれる?」などの、答えられない質問を投げかけてくることがあります。そんなときは、「わかるはずないでしょ」などと拒絶せずに「どうなんだろうね」と一緒に悩んであげるようにしています。

 

食事に関しても、光汰朗は毎日、同じメニューを好みます。「飽きてしまうのでは」と思って、ほかのものを出すとかえって心が乱れてしまうようです。たとえ、よかれと思ってやったことでも、必ずしも相手にとって心地よいとは限らないということに気づくことができました。このような経験から、「幸せの形は人それぞれなのだから、押し付けてはいけないな」と感じることができています。

 

── 子育てを通して、ご自身が変わったと感じる点を教えてください。

 

立石さん:以前の私は、「こうあるべき」という考えをとても強く持っていました。でも今は、「その人なりの幸せってなんだろう」という視点で考えられるようになったと感じています。

 

「息子に障害がある」とわかったことは、想定外の出来事でした。その後も思い描いていた通りに進まないことのほうが多く、たくさんの葛藤がありました。でも、想定外だったからこそ気づけたこともあったのはたしかなことです。世間の基準にとらわれず、「この子にとっての幸せ」に集中できるようになりました。そのことが、私の生き方にも豊かな広がりを与えてくれたように感じています。

 

 

子育てを通して立石さんがたどり着いたのは、「正しく育てる」よりも「その子の世界を否定しない」という姿勢でした。その経験から得た学びと気づきを、講演活動や執筆活動で発信する立石さんは、「どうすれば正しく育つか」ではなく、「否定しない子育てを大切にしてほしい」と呼びかけています。

 

取材・文:佐藤有香 写真:立石美津子