時代の変化に沿って進化を遂げ
── 復活したたまごっちは、大人が持つ携帯電話と赤外線通信ができたとのことですが、たしかに当時はまだ小学生が携帯を持つ時代ではありませんでしたね。
青柳さん:大人への憧れの部分という要素も盛り込み、2000年代は携帯を模倣してアンテナがついたデバイスの発売がありました。2008年にはカラー液晶になり、2009年にはアニメ放送もスタートしました。アニメをきっかけに知ってくださった方が購入してくださって、第3次ブームが起きます。
2014年に発売された「TAMAGOTCHI 4U」は、交通系ICカード等で使用されているNFC機能(近距離無線通信技術)技術が普及したタイミングで、たまごっち同士をタッチして通信する機能が搭載されました。その後、BluetoothやWi-Fiを搭載するなど、たまごっちは時代の流れや社会の変化に沿って進化していきます。
── 現在は第4次ブームと言われていますが、このブームが起きたきっかけはなんでしょうか。
青柳さん:ちょうど初代の1996年当時のたまごっちを知っている世代の方が懐かしんでくださって、グッズや商品を買ってくださっています。また、2004年以降に復活したたまごっちを購入してくださった、20代後半〜30代前半の第2次ブームの世代の方も、再び現在のたまごっちを愛してくださっているそうです。平成レトロブームや平成女児ブームもありまして、それより若い世代の方は、たまごっちを新しい感覚で遊んでくださっています。
第4次ブームは、小学生〜大人の方まで幅広い世代に響いているという印象があります。私共としては、2世代で遊んでいただけたらうれしいなという思いで作っています。

── 忙しい現代人向けに、最近の機種にはシッター機能も搭載されていると伺いました。
青柳さん:忙しくてお世話ができない時間に、お手伝いをしてくれる機能があります。ちなみに社内ではそれぞれがたまごっちを持っているのですが、仕事中に音が鳴るのは当たり前ですし、割と深刻な会議中でも、たまごっちが鳴ったらその場でお世話をするというのは普通の光景です。社外の方からはかなり驚かれますね(笑)。
── 学生時代に机の下でコソコソとお世話をした経験があるので、羨ましい環境です!
青柳さん:打ち合わせ中に少し長く席を外している方がいて、たまごっちを席に置いているのを見つけた場合は、それに気づいたほかの誰かがお世話しているというのもよくある光景です。
── 優しい世界線ですね。日本だけではなく海外でも展開されていると伺いました。
青柳さん:実はあまり知られていないのですが、90年代に日本で第1次ブームが起きた翌年に海外でも発売をしていまして、アメリカとヨーロッパでブームになりました。ワールドワイド向けの商品は、日本で新機種が出るたびに海外でも発売しています。今では累計出荷数の51%が海外を占めています。
おもちゃやキャラクター商材は、文化圏が似ているアジアをメインに売れていくことが一般的なのですが、たまごっちに関しては、生き物を育てるという、人種や文化も問わない普遍的な価値観が広く受け入れられたのではと分析しています。現在は、インバウンド需要で海外の方が日本に来られて購入しているケースも多いようです。日本で購入するとパッケージは日本語なのですが、「Tamagotchi Paradise」は起動後に9つの言語から選べる仕様になっていますのでお土産としても人気です。
── 今年の11月で発売開始から30周年を迎えるそうですが、長年愛されるコンテンツを発信する立場としてどんなことをみなさんに伝えたいですか。
青柳さん:初代から大切にしてきた、人間が本能的に大切にしたいと思う生き物のお世話をするというコンセプトやアイコニックなデザインは変えずに守りつつ、それ以外の要素は時代に合わせてアレンジし、進化し続けています。30年間、少しお休みの期間を挟みながら続いているものなので、みなさんに懐かしんでいただけるようなコンテンツを用意しつつ、新しい価値や仕組みを楽しんでいただけたらと思います。
取材・文:内橋明日香 画像:(株)バンダイ