夫が表舞台から裏方に回った訳
── 本来であれば、華やかな芸能界とはまったく違う道に進むはずだったと。それでもソロデビューを決断されたのは、どんなきっかけがあったのでしょう。
イルカさん:夫の熱意に背中を押されたからです。彼には「いつか自分の手でアーティストをプロデュースしたい」という夢があり、私に出会ったとき、「こいつはおもしろい!」と思ったらしいんです。ただ、いきなりソロはムリだから、まずはシュリークスで経験を積ませ、その後、ソロデビューさせるという青写真を描いていたみたいで。
── なかなかの戦略家でいらしたのですね(笑)。
イルカさん:10年先まで見越して動く人でしたから。最初に「解散してソロになる」と言われたときは、てっきり夫のことだと思っていたんです。彼は美しい声の持ち主でステージでの評判もよかった。ところが「いや、違うんだ。僕が裏方に回って、プロデュースやマネジメントをやる」と言うので驚いちゃって。
当時は中三トリオ(山口百恵さんら)が絶大な人気を誇っていた時代。私はすでに20歳を超えていましたからデビューするには少し遅い。周りからは「美人でもない地味顔の女子がソロで歌っても、売れるはずないだろう」なんて言われていました。

── それでも神部さんはイルカさんを世に出すことに熱心だった。どんな思いがあったのでしょう。
イルカさん:きっかけは吉田拓郎さんとの出会いでした。拓郎さんを見て、「これからは、単に歌がキレイに歌える人が売れる時代ではない。あんなふうに自分の主張や個性を持ち、それを出せる人間じゃなきゃダメなんだ」と痛感し、自分は表舞台ではなく、昔からの夢だったプロデューサーとして生きていこうと決めたそうです。
そして私に「これからの時代に合うのはイルカだ。君の才能を信じている」と。彼は最初に才能を認めてくれた人でした。その熱意に応えたくて「私を全部あげますから、好きにやってみたら?」と、伝えたんです。