江戸最大の八幡様としても有名な富岡八幡宮に向かう中で見えてくる、一見おしゃれなカフェ。じつはここ、2025年夏に開業した民間のシェルターなんです。「こんなにオープンでいいの?」と思うくらいの開放感あふれる佇まい。立ち上げた経緯を所長の高橋亜美さんに聞きました。
誰もが立ち寄れる「開けた」シェルター
── 今回、富岡八幡宮の参道沿いにオープンした「ながれる」。一見すると和モダンなカフェのような外観ですが、虐待や貧困などから一時的に避難する民間のシェルターです。コンセプトは「誰もが立ち寄れる」という、これまでになかったもの。所長の高橋さんは、2011年から親や家庭に頼れないなど困難を抱える若者のサポートをしてきたとのことですが、どういった経緯から「ながれる」を立ち上げたのでしょうか?
高橋さん:これまでのシェルターは安全確保のため、厳しい制限がどうしても必要でした。DVなどで家族から追われるなど、命の危険がある方は少なくありません。居場所を外部に漏らしてはいけないため、「連絡禁止」「スマホの使用禁止」など、社会から切り離された生活を送らざるを得ないケースが多かったんです。
当然、本人を守るための措置ではありますが、「そこまで厳しい場所には入りたくない」とシェルターの利用をためらう方がいます。そこで「ながれる」では、社会と隔てるのではなく、多様な人がゆるやかにつながれる場所を目指しました。
「ながれる」は4階建てのビルをリノベーションしています。1階はキッチンも併設された飲食フロア。レンタルスペースとしても活用でき、木〜土曜日はカフェとしても営業しています。2階はブックカフェとワークスペース。本を読んでゆっくり自分と向き合う時間を持ってもらえたらなと考えています。3階はシャンプーベッドを設け、月に数回、プロによるヘッドスパが受けられます。4階は一時宿泊ができるシェルター機能を持つスペースです。
飲食フロアは地域の人や支援者たちも気軽に集まれる場所であると同時に、シェルターでもあり、これまでにない新しい施設です。
支援する側の行き詰まりを感じていた
──「シェルター=閉ざされた空間」からの転換ですね。なぜこうした場所を作ろうと考えたのでしょうか?
高橋さん:2011年から虐待や貧困によって生きにくさを抱える人の支援に取り組んできたなかでの、ある気づきからです。社会福祉法人・ゆずりはを立ち上げ、困難な状況にある人たちのサポートを長らく続けてきました。支援の大切さとともに行き詰まりも感じてしまって…。

──どんなことに行き詰まりを感じたのでしょうか?
高橋さん:生活困窮やDV被害などで傷ついた人たちに寄り添っていくことを大事にしてきました。けれどそれはときに、「傷ついている相談者」と「相談者を全力で受け止める支援者」という閉じた関係性を固定化させていました。トラウマを抱えてきた人は、これまで積み重なった苦痛や不安を抱えています。自分を受け止めてくれる人がいると、無意識のうちに否定的な感情をぶつけてしまうことがあります。支援者に矛先が向かい、攻撃的になる場合も少なくありません。
支援者は相談者に寄り添い続けていくなかで、感情の受け皿になることで消耗して、精神的な限界を迎えてしまうことも少なくなく、一生懸命に取り組んできたスタッフがバーンアウトするのを何度も見てきました。
私たちが、相談者の「支援が必要な人」という側面を重視しすぎることで、彼らに知らず知らずのうちに、支援されるのが「当たり前」と思わせてしまうこともあったと思います。ただ寄り添うだけでは、解決しない問題が生じると感じました。