時代を先取りで失敗も
── ちなみに、今だから言える、あまりヒットしなかった機種があれば教えてください。
門脇さん:弊社は現在業界最大手で、これまでに258機種(2025年3月末時点)を世に生み出しているのですが、1997年に発売した第1号機の「似テランジェロ」は売れませんでした。もともと弊社は体温計などで有名なオムロンのエンタテインメント事業からスタートしており、技術面には誇りがあったので、顔認識技術を使って、撮影した顔から似顔絵を作る機種を発売しました。ところが売れ行きがよくなく…。イラストのタッチがよくないのが原因かと思い、当時の女子高生に聞き取りをしたところ、「私たちは写真をシールにしたものがほしいのであって、似顔絵はいらない」との回答があったそうです。

── なるほど。今でこそ自分の顔を携帯アプリでアニメ風にすることなどが流行っていますが、1997年当時は先取りしすぎてウケなかったんですね。
門脇さん:第1号機でのこの経験をかてに、弊社ではユーザーの声に寄り添うということを大切にしていて、当時は状況が苦しくなって他社が撤退していくなかでも、市場のニーズを把握して機種の開発を続けたことでヒット機を生み出すことができました。
参入初期の段階から女子高生をメインターゲットにユーザーインタビューをしているのですが、開発中の機種を撮ってもらい感想をもらうほかに、実はプリントシール機とはあまり関係のない質問もしているんです。今学校でどんなものが流行っているかや、どんなものが好きかということを伺って、企画者がより女子高生と近い感性を持ち続けることを意識しています。
── 取り入れた意見は新機種の開発に反映させるものだと思っていました。
門脇さん:新機種を1台作るのに1年〜1年半ほど時間がかかるので、企画段階で流行っていたものは発売時には時代遅れになってしまいます。弊社では、トレンドを熟知しているメンバーが若い感性を取り入れる持ち続けることを目的にユーザーインタビューを続けています。