早期発見も手術を拒否した父の思い
── お父さまのがんが見つかったのは、雅美さんがまだ大学生のころだったとか。当時、どのような状況だったのでしょうか。
雅美さん:がんが最初に見つかったのは、父が50歳のときでした。もともと食事を管理したりサプリを飲んだりと、人一倍健康に気を使うタイプだったのですが、会社の健康診断で前立腺がんが見つかったんです。そのときは「手術をすれば大丈夫でしょう」と、言われていました。
ただ、早期発見ではあったのですが、腫瘍が思いのほか大きく、当時の技術では大がかりな手術になると説明されたんです。もし神経に少しでも傷がつくと、おむつでの生活になるかもしれない、と。それが相当ショックだったようです。50代の若さで、生活が一変してしまうことへの不安やプライドもあったのだと思います。「手術だけはイヤだ」と、頑なでした。
定年まで10年以上あり、私たち子どもの学費もまだかかる時期。「後遺症を抱えて、いままで通り働けるのか」という不安から、父はネットで必死に情報を集め、「免疫療法なら手術なしで治せる」と。私たちは「手術のほうが確実だから」と説得したのですが、父の意思を変えることはできませんでした。結局、手術療法や放射線治療といった化学的根拠に基づいた「標準治療」は受けずに、自由診療の免疫療法を選びました。費用もかなりかかったようです。