ゴミ屋敷が解消された後に思うこと

石田毅
誰でもゴミ屋敷になる可能性があると語る 

── ゴミ屋敷化してしまった人の、印象深いエピソードを教えてください。

 

石田さん:小学校低学年の娘がいる30代のシングルマザーの方ですね。仕事と家事でヘトヘトになりながら、なんとか踏ん張っていたのですが、体調を崩してしまったそうで。仕事は休めないので出勤していたのですが、疲労困憊で家事をする体力も気力も失っていました。毎回の食事はコンビニ弁当です。

 

1週間もすると、ゴミ袋が重なり、洗濯ものが溢れ、シンクは食器だらけ。そんな状況を目の当たりにして、ご自身も「まるでゴミ屋敷だ」と驚かれたそうです。それでも休日は体を休めるだけで精一杯。片づけることができなかったんです。そのうち、ゴミを袋に入れることすらできなくなり、足の踏み場がなくなって、ゴミを踏んで歩く環境が当たり前になってしまいました。

 

仕事は続けているので、お風呂に入ったり、洗濯はしていたんでしょうね。身なりは普通でしたが、僕が行ったときには腰あたりまでゴミが積まれていました。

 

── そこまで無気力になってしまった女性が、なぜゴミ屋敷専門パートナーズに依頼する気になったのでしょうか。

 

石田さん:娘さんに誕生日プレゼントをたずねたところ、「ママと遊びたい」と急に泣き出したそうです。さらに「友達を家に呼べるようにしてほしい」と懇願され、娘にどれほど寂しい思いをさせていたかと、ハッと我に返ったそうです。

 

僕たちが片づけ終えた部屋をご覧になったお母さんは、安堵したのかその場に膝から崩れ落ち、「本当に助かりました」と涙を流されました。「娘との時間を大切にします。人生を一からやり直すつもりで頑張ります」とおっしゃっていました。

 

娘さんも近くにいて、「友達を呼べるようになったね、これから家で楽しんでな」と声をかけると、「ありがとうございます!」と喜んでいました。

 

── 部屋がリセットされることで、人生まで変わるんですね。

 

石田さん:見積もりの段階でお母さんの状況を聞いていたので、実はほぼ利益が出ていない費用で依頼を受けたんです。事情を聞いたスタッフに「受けていいですか?」と確認され、快諾しました。毎回同じことをしていては会社が立ち行かなくなってしまいますが、困っている人を助けたい、笑顔を取り戻してもらいたいというのが、創業時からの想いですから。

 

ゴミ屋敷が解消されると、9割以上の方は繰り返すことがありません。収集癖が強い方、どうしても物を捨てられない人は別なのですが、悪いタイミングが重なってゴミを溜め込んでしまった人は、元の生活に戻ることができます。

 

── ゴミ屋敷にならないために、読者に伝えたいことはありますか?

 

石田さん:困ったときには、誰かに相談すること、頼ることがいちばんだと思います。ただ、これが意外に難しいようです。つらく苦しいときに、自分の弱さをさらけ出せる人は、そう多くはないのだと思います。さっきのお母さんも病気になったときに、友人や会社の方に相談していたら、せめて娘さんにゴミ捨てだけでも頼めたら、結果は違っていたと思います。自分だけで頑張ることをやめて、助けを求めることも大切です。

 

また、「誰かに相談しなければ」と感じるころには、状況はすでに深刻化しているケースがほとんどです。そうなる前に、日頃から簡単な片づけを習慣づけ、予防することが大切です。トイレを使い終わったときに軽く掃除をする、お風呂から上がった後に、ついでにお風呂掃除をするなど、負担にならないルーティンを見つけていただきたいと思います。

 

取材・文/小山内麗香 写真提供/ゴミ屋敷専門パートナーズ