年間3000件以上の「ゴミ屋敷」を片づける専門業者「ゴミ屋敷専門パートナーズ」。代表の石田毅さんは、誰もがゴミ屋敷にしてしまう可能性があると語ります。やむを得ずゴミをため込んでしまった人たちの実態は── 。

「娘に任せているから来ないでください」

石田毅
颯爽と働く石田さん

── 年間で3000件以上のゴミ屋敷を綺麗にする、ゴミ屋敷専門パートナーズを運営する石田さん。会社を立ち上げたきっかけを教えてください。

 

石田さん:もともと廃品回収会社の運営していたんですけど、あるとき依頼があって伺うと、玄関の前に小学校低学年くらいの女の子がちょこんと立っていて、「今回よろしくお願いします。うちかなり汚いんですけど、大丈夫ですか?」と恥ずかしそうに、でもしっかり対応されたんです。中に入ると、大人の腰ぐらいの高さまで食べ残しのゴミや生活雑貨が埋もれた、いわゆるゴミ屋敷でした。2LDKで、犬2匹と母子2人暮らしだったようです。

 

母親は奥の部屋にいるのですが、「娘に任せているから来ないでください」と言われて、出てきません。袋10袋分ぐらいの仕分けして、見積もりは2万7000円ほどでした。女の子は僕に3万円渡しながら「汚くて臭かったと思うので、お釣りはみなさんの飲み物代とかにしてください。お金もないんで、これからちょっとずつ片づけていこうと思います」と言うんです。

 

その健気な姿に胸が締めつけられ、とても代金を受け取ることはできませんでした。「自分の好きなものを買ってください」と伝えて現場を後にしたものの、女の子の「汚くて、すみません」という言葉が脳裏から離れず、眠れない日々が続きました。なにかしてあげられることはなかったのか、気をつかわずに依頼できる会社にできないかと考えて、「ゴミ屋敷専門」を銘打ったゴミ屋敷専門パートナーズを作りました。

 

── ゴミ屋敷化するのはズボラな人だと思いがちですが、誰でも可能性があるそうですね。

 

石田さん:そうです。たとえば、身内の不幸とか、心身の不調、何らかの事情でゴミを溜めてしまって、気づけばひとりでは片づけられない状態になってしまうことがあります。また意外にも、心の優しい方ほどゴミ屋敷になりやすい傾向があります。他人を優先するあまりご自身のことが後回しになり、誰にも助けを求められずに抱え込んでしまうのです。